パニック障害の鍼灸治療

2025年1月15日

症例
20代 男性

会社に自転車で通勤途中に急にめまいがして立ち止まった。その日は夏で朝から気温が高く、水分が足りていないと思い自販機で飲料水を買って再び自転車に乗って会社に向かった。いつもギリギリで会社に行くので今回はめまいで立ち止まったこともあり、かなり急いで会社に向かったが、10分程経過した後にまためまいがするようになった。
今度は我慢して自転車をこいでいるとだんだんと息苦しさや冷や汗が出てきた。手足なども痺れてきて突然恐怖感が襲ってきた。 何か深刻な病気だと思い、救急車を呼んで病院に搬送された。病院につくころには症状は治まっていて、様々な検査を受けたが何も異常は見つからずに軽い熱中症ではないかということで点滴だけうって帰った。 その後、次の日体調は改善したと思い、自転車で会社に向かったがまた同じような症状に襲われた。前の日よりも症状は軽く、救急車までは呼ばなかったが会社には行けずに家に帰ってきてしまった。
その日は会社を休み、次の日今度は徒歩と電車で会社に向かった。電車の中でめまいが少し起きたが、なんとか会社には行けた。 数日自転車には乗らず、徒歩と電車で通勤することになり、前のような症状が起きることはなかったが、今度は会議でプレゼンをする前にめまい・冷や汗・しびれ感が起きた。仕事にも支障が出るほどでまたしっかりと病院で検査を受けたが、異常が見つからず、心療内科を受診したところパニック障害と診断された。薬を処方されて服用中ですが自律神経を整えていきたいということで当院にご来院された。

 

治療
自律神経測定器で自律神経の状態を測定した上で治療していきました。初めての治療後、身体が軽くなったと感じて帰りも軽快に帰ることができた。 治療5回目で外出しても不安感がだいぶ出ないようになってきた。本人も発作が出そうになってもパニックにならずに対処できるようになってきたとおしゃっていた。この段階で仕事を休みがちだったが少しずつ仕事に向かえるようになってきた。
しかし、まだ時折恐怖感と不安感が急に襲ってくることもあるとのこと。 治療10回目で改めて自律神経の状態を計測したところ、以前よりも交感神経と副交感神経のバランスがよくなっていた。電車の中や会議中でも恐怖感は起こらずに過ごせたことで自信を持てるようになってきた。心療内科でも処方される薬の量が減ってきている。

 

 

パニック障害

パニック障害は、100人に3人の人は発症していると言われており、パニック障害で悩まれている方は意外にも多いです。芸能人でも中川家剛さんやyuiさん、長嶋一茂さんなどがパニック障害にかかったことがあるという話は有名です。 パニック障害は、突然の動悸や息苦しさを発症して死んでしまうのではないかという強い不安にかられる症状です。動悸息苦しさのほかにも冷や汗めまい手の震え痺れの症状がでることもあります。

パニック発作の悪循環 パニック発作は長くても1時間でおさまります。多くの方は、発作が起きて救急車に運ばれて病院に着くころには嘘のように症状が治まっていたりします。
そして、脳や循環器の検査を受けても特に異常は見当たりません。 症状が治まったからといってパニック障害の怖いところはこれで終わりというわけではないということです。これからがこの疾患で一番厄介なところです。
それは、パニック発作がまた起きてしまうのではないかという強い不安感から生まれる「予期不安」というものです。予期不安から電車の中や高速道路の運転中、映画館の中など逃げ場のないような場所や以前パニック発作が起きた場所、大勢の人が集まるような場所を避けるようになり、外出する恐怖が生まれてしまうのです。
なかなか家からでらせずにうつ病などの他の精神疾患を患ってしまう場合もあります。 また、勇気を出して外出した場合でも外出先でまたパニック発作を起こしてしまった時にさらに予期不安が強く出るようになってしまうのです。

1回起きてしまったパニック発作がこうやってどんどん症状を悪化させてしまうのです。

パニック障害

パニック障害の診断

精神疾患は今はだいぶ知られるようになってきて心療内科などにいくことが、抵抗ない人が増えてきましたが、依然として気持ちの問題であるとか罹ってしまったことによる恥ずかしさなどからまだ心療内科を受診することに抵抗ある人は多いです。

今でも精神疾患に対する治療の研究は盛んにおこなわれています。しっかりと医療機関で診断してもらい、治療を受けていくことで改善していくことが多いので勇気をもって心療内科を受診しましょう。 パニック発作で多く適用される診断基準は下記のとおりです。少しでも当てはまり、日常生活に支障が出ている方は一度病院を受診してください。

・動悸や脈拍が速くなる

・手足の震え

・息苦しさ

・のどが詰まったような感覚がある

・吐き気や胃の不快感

・めまいやふらつき

・体に痺れが出る

・突然の不安感や不安感に襲われる

・冷や汗

・自分の感情がコントロールできない

・自分が自分でなくなる感覚

 

これらの状態が普段はないが、電車内や会議中、人前で話しているときなどの逃げ場のない場所や大勢の人が集まっているときなどに見られる場合はパニック障害の可能性があります。

 

パニック障害にかかりやすい人

パニック障害ははっきりとした原因はわかっていませんが、パニック発作にかかりやすい人にはある特徴があると言われています。 もっとも起こりやすい年代と性別は、30代女性で次いで20代女性です。
30代女性では100人7人の割合でかかる疾患だと言われるほどです。また、家族にパニック障害を患ったことのある方もパニック障害にかかりやすいと言われています。 その他にもパニック障害にかかりやすい人の特徴とは、

・仕事や家事でストレスをため込みやすい

・趣味もなく、友人などにも相談できない

・完璧主義で神経質な性格 ・悲観的で内気な人

・仕事や家事で決して妥協のしない頑張り屋さん

・お酒を毎日のように飲む

・家庭や職場での人間関係がうまくいっていない

・うつ病や自律神経失調症にかかったことのある方

・喫煙習慣がある

このような特徴があります。これをみると過度なストレスが大きくかかわっていることが予想されます。
逆に上記のような項目を克服するとパニック障害にかかりずらく、またパニック障害を患っている人は改善できる可能性が格段に上がります。 特にパニック障害を発症する人はストレスは知らない間にかかっているものであり、気づかないことがほとんどです。毎日自分の今のストレス状態を把握するようにして上手に発散するようにしましょう。

 

パニック障害の原因

パニック障害にかかってしまう原因は、詳しく解明されていません。性格的な要因や環境的な要因が大きく関係していることは確かですが、そのほかにも脳の状態の変化が注目されています。 パニック発作が起こった患者さんの脳では、不安感を解消する脳内のセロトニンという物質が少ないことが分かっています。

また逆に不安や興奮作用を促すノルアドレナリンという物質が増えているということもわかっています。ノルアドレナリンは、自律神経系の交感神経の活動を高めて、動悸や発汗、震えや痺れなどの興奮活動を引き起こすのです。

同じような状況でパニック発作を起こす人と起こさない人がいるようになぜ脳内がそのような状態となるのかはいまだ解明されていません。しかし、脳内の変化を手掛かりに脳内の活動を正常に戻すような薬は開発されており、心療内科ではそのような薬が処方されま

 

パニック障害の当院の治療

パニック障害は東洋医学では五臓六腑の乱れ特にが深く関係していると言われています。

肝は情緒を安定させて自律神経系を円滑に活動させる働きがあり、肝腎同源と言われるほど腎との関係は深いです。また、腎は恐れの感情を主っていると言われています。

肝と腎どちらかの機能が弱くなっても二つの関係は親密なため相互に影響を与えてパニック障害にかかりやすいと考えられます。当院の治療では、東洋医学の観点から肝と腎の働きを整えていくことを第一として治療していきます。

また、自律神経の状態も重要です。当院では、自律神経測定器を備えているので自律神経の状態を測定して把握したうえで自律神経の状態を整える治療を施していきます。
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パニック発作の予防法

パニック発作はストレスや疲れが大きくかかわっています。ストレスや疲れをため込まないようにしましょう。しかし、お酒やタバコに頼るのはさらにパニック症状を悪化させることもあります。その時は、リラックスできているように感じますが、その後時間が経つと不安が強く出る傾向にあります。特に二日酔いになるまで飲むとその次の日にパニック発作が強く出ることが多いです。 パニック発作を予防する基本的なものとして

 

・睡眠時間を確保して疲れを溜め込まない
・趣味や音楽を聴いてストレスの発散やリラックスする時間を設ける
・お酒とたばこに頼らない
・二日酔いになるまで飲まない ・カフェインを摂取しすぎない
・早寝早起きを心がける
・毎朝のウォーキングを日課にする

ウォーキング

などが挙げられます。自分だけで悩まずちゃんと医療機関を受診することで悩みを相談したり、同じような状況で悩んでいる人がいるということを理解することで症状が軽快していくこともあります。自分だけで悩まずに医療機関を受診するようにしましょう。

 

症例

30代 女性

半年ほど前から突然、動悸や息苦しさ、手足のしびれを感じる発作が起こるようになった。特に人混みや密閉された場所にいると症状が出やすく、外出が怖くなり、次第に外に出ることを避けるようになった。発作が起きると強い恐怖感に襲われ、冷や汗や震えが伴うことも多い。夜も発作への不安から眠りが浅くなり、日中は疲労感が強い。内科で検査を受けたが異常はなく、心療内科で「パニック症」と診断され薬を処方されたが改善せず、当院に来院した。

当院の治療

まず、自律神経の状態を測定したところ、交感神経が過剰に活動し、常に緊張状態であることが判明。特にストレスや発作が引き金となり、過度の交感神経優位が続いていると考えられた。治療方針として、全身の自律神経バランスを整える鍼灸施術を中心に行い、特に心肺機能をサポートするツボや副交感神経の活動を促すツボを選定。

1回目

治療後、身体全体が軽くなり、緊張が緩和されたと感じた。その夜は久しぶりに少し深く眠ることができたが、翌日再び軽い発作があった。

治療間隔は3〜4日に1回を目安にした。

2~4回目

発作の頻度はまだ変わらないが、症状が出ても以前ほど強く感じないと報告。外出時の不安感も少しずつ薄れてきたように感じる。

5回目

外出先で安心感を持てる時間が増えてきた。夜も以前より眠れるようになったとのこと。

治療間隔を1週間に1回に延ばして経過をみていく。

6~7回目

1週間のなかで数回軽い発作が起きたが、人混みや電車に乗ることへの恐怖感は軽減してきた。日常生活の範囲を徐々に広げている。

8回目

外出時もリラックスした状態を保てるようになり、買い物や友人との食事も楽しめるようになった。

9~10回目

発作の恐怖から解放され、日常生活を問題なく過ごせている。鍼灸治療を続けることで体調が安定し、自信も取り戻してきた。発作への不安がほとんどなくなり、今後は月1回のメンテナンス治療を継続予定。


Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 10:38 / 院長コラム

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