2025年8月23日
筋萎縮性側索硬化症(ALS:Amyotrophic Lateral Sclerosis)は、脳や脊髄にある運動神経が少しずつ壊れていき、筋肉を動かす力が失われていく病気です。
初めは「箸が持ちにくい」「足がつまずきやすい」といった小さな変化から始まり、進行すると筋肉のやせや力の低下が全身に広がっていきます。
最終的には呼吸を助ける筋肉も弱くなり、人工呼吸器を検討する方も少なくありません。
現代医学では進行を完全に止める方法はまだ確立していませんが、薬物療法やリハビリ、栄養管理などが組み合わされ、生活の質(QOL)を高めるための工夫が行われています。
その中で、補完的な治療として「鍼灸」に注目が集まっています。
また似ている疾患として球脊髄性筋萎縮症(SBMA)があります。
こちらについてもコラムがありますので、お時間ある方はご確認下さい。
鍼灸はALSそのものを治すものではありませんが、症状をやわらげることで以下のような効果が期待できます。
・筋肉のこわばりやけいれんを緩める
・肩や腰の痛みを軽減する
・呼吸や嚥下を少しでも助ける
・自律神経を整え、睡眠や気分を改善する
・血流を促し、全身の疲労をやわらげる
東洋医学では、ALSを「気・血・津液(体を潤す水分)」や「五臓六腑」のバランスの乱れとして捉えます。
気の不足(気虚)
気は体を動かすエネルギーです。ALSでは筋肉が衰えるため、東洋医学的には「気が不足して体を動かす力が弱まっている」と考えられます。
血の巡りの悪さ(瘀血)
筋肉がこわばり、痛みやしびれが出るのは「血の巡りが滞っている状態」とされます。血の巡りを整えることは、筋肉の緊張や痛みの改善につながります。
津液の偏り(痰湿)
ALSでは飲み込みや呼吸のしづらさが起こります。これは「津液(水分代謝)がうまくいかず、体の中に余分なものが停滞している」ことに例えられます。
臓腑の関わり
肝:筋肉や腱を司る。肝の働きが弱ると筋肉のひきつりやけいれんが増える。
脾:気血を生み出す。脾が弱ると全身の筋力が落ちやすい。
腎:骨や髄をつかさどる。腎が弱ると神経や筋肉の働きも低下すると考えられる。
つまり東洋医学的には「肝・脾・腎の弱り」と「気血津液の乱れ」がALSに深く関わっていると捉えます。
気を補う(補気)
体のエネルギーが不足しているときには、気を補うツボを選びます。これにより「だるさが軽くなる」「動きが少し楽になる」と感じる方がいます。
血の巡りを整える(活血)
筋肉のこわばりや痛みが強いときには、血流を良くする経穴を使います。血の巡りが整うと「筋肉が柔らかくなる」「冷えが和らぐ」といった効果が期待されます。
水分の流れを調える(化痰利湿)
飲み込みのしづらさや痰がからむ感じには、水分代謝を助けるツボを刺激します。これにより「むせにくい」「呼吸が少し楽」と感じる場合があります。
臓腑を整える
肝 → 筋肉のけいれんや緊張をやわらげる
脾 → 体力低下や食欲不振に対応する
腎 → 神経や筋肉の働きを支える
このように、症状に合わせて臓腑のバランスを調えることが鍼灸の特徴です。
筋肉のこわばりやけいれんの緩和
鍼灸は筋肉に直接作用し、神経の過敏さを抑えます。東洋医学的には「肝の気を整え、血流を良くする」ことで改善を図ります。
痛みの軽減
萎縮や姿勢の崩れから生じる肩や腰の痛みには「活血」と「気の巡りを整える」施術が有効です。痛み止めに頼らず和らぐこともあります。
呼吸や嚥下のサポート
胸やのどの筋肉を緩める施術で、呼吸や飲み込みを助けます。東洋医学的には「痰湿をさばき、気の流れを整える」アプローチです。
自律神経と睡眠
鍼灸は副交感神経を高め、眠りやすさや気分の安定に役立ちます。東洋医学的には「心身を鎮める陰の働きを補う」施術です。
さらに、当院では自律神経測定器を用いて、自律神経の状態を可視化することで、客観的にお身体の状態を確認してより正確ができるように心がけています。
そのためひとりひとりのおからdに合わせたオーダーメイドの治療が可能となっております。
・ALSそのものを治せる治療法ではないこと
・主治医との連携が大切
・無理のない体勢・やさしい刺激で行う
・継続することで効果が安定するということ
ALSは進行性の病気で根本治療はありませんが、鍼灸は「症状を和らげ、生活を支えるケア」として活用されています。
西洋医学は「筋肉のこわばり・痛み・呼吸や嚥下のしづらさ・睡眠障害」を緩和を目的に、東洋医学は「気血津液の乱れ」や「肝・脾・腎の弱り」を整えることで、全身のバランスを改善を目的に、また、副作用が少なく継続することで体調の波を安定させることが期待できます。
鍼灸でALSそのものを治すことは出来ませんが、「少しでも楽に過ごす」「少しでも安心できる」ことで生活の質(QOL)を高めることは出来ます。
お困りの際はお気軽にご相談ください。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 09:54 / 院長コラム