2025年6月16日
頭痛は、脳そのものが痛みを感じている訳ではありません。実際、脳には痛覚がありません。
痛みを感じているのは、脳を包む膜や血管、筋肉、神経といった周囲の組織です。何らかの刺激がこれらの部分に加わることで、痛みとして脳が認識し、頭痛が起こります。
血管が拡張して神経を刺激したり、筋肉が緊張して血行が悪くなったりすることで痛み物質が放出され、これが「ズキズキ」「締めつけられるような」といった感覚として現れるのです。
頭痛には大きく分けて3つのタイプがあります。
・緊張型頭痛
最も一般的な頭痛で、頭がギューッと締めつけられるような痛みが特徴です。長時間のデスクワークやスマホ操作などによる、筋肉の緊張が原因となります。
・片頭痛(偏頭痛)
ズキンズキンと脈打つような強い痛みが特徴です。女性に多く、光や音に敏感になったり、吐き気を伴うこともあります。血管の急激な拡張が関係しています。
・群発頭痛
目の奥がえぐられるような激しい痛みが特徴です。数週間から数カ月にわたり、決まった時間帯に集中して起こることが多く、男性に多く見られます。
他にも、外傷や病気が原因の「二次性頭痛」もあるため注意が必要です。
頭痛の原因は非常に多岐にわたります。主な要因には以下のようなものがあります。
・ストレス:精神的なストレスや不安は、自律神経のバランスを崩し、血流の悪化を招きます。
・姿勢の悪さ:肩や首の筋肉が緊張し、血流障害を起こすことで頭痛が発生します。
・睡眠不足や過眠:睡眠リズムの乱れが神経系に影響を与えます。
・食事:空腹や、特定の食品(赤ワイン、チョコレートなど)がトリガーになることも。
・気圧や気候の変化:特に片頭痛は、天気や気圧の影響を強く受けます。
症状は頭痛のタイプによって異なりますが、以下のような例が一般的です。
・締めつけられるような痛み(緊張型)
・脈打つようなズキズキ感(片頭痛)
・目の奥が痛い、涙が出る(群発頭痛)
・吐き気や嘔吐を伴う
・音や光が辛く感じる
・頭の片側だけが痛む など
頭痛は「慢性化」しやすいという特徴があります。特に緊張型頭痛は、毎日の習慣や生活環境に密接に関係しているため、放っておくと習慣化しやすくなります。また、片頭痛はホルモンバランスとの関係が深く、月経前後や更年期などに悪化することがあります。
自律神経とは、体の内側のバランスを保つ神経で、交感神経(活動モード)と副交感神経(リラックスモード)があります。ストレスがかかると交感神経が優位になり、血管の収縮や筋肉の緊張が続きます。これが慢性的な緊張型頭痛や片頭痛を引き起こす要因となります。
また、睡眠の質や内臓の働きにも影響を与えるため、頭痛だけでなく、全身の不調とつながっているケースも多いです。
西洋医学では、頭痛は「痛み」として明確に診断され、鎮痛薬やトリプタン系薬剤(片頭痛)などが処方されます。MRIやCTなどで脳の異常がないかを確認することも重要です。
ただし、薬に頼りすぎることで「薬物乱用頭痛(薬物依存による頭痛)」を引き起こすこともあるため、薬の使用は計画的に行うことが勧められます。
東洋医学では、「頭痛」は気・血・水(き・けつ・すい)の乱れと捉えられます。
・気の滞り → ストレスによる「肝気鬱結(かんきうっけつ)」
・血の不足 → 貧血傾向や疲労による「血虚(けっきょ)」
・水の停滞 → めまいや重だるさを伴う「痰湿(たんしつ)」
頭の痛む場所や痛み方、体質によって原因を細かく分析し、全体のバランスを整えることで改善を図ります。
鍼灸は、東洋医学の観点から体全体のバランスを整えることで、頭痛の根本的な改善を目指します。
・首肩の筋肉の緊張を緩めて血流を改善
・自律神経の調整(交感神経の興奮を抑える)
・体質に合わせた経穴(ツボ)へのアプローチ
特に、頭痛に効果的とされる経穴には「風池(ふうち)」「百会(ひゃくえ)」「太陽(たいよう)」「合谷(ごうこく)」などがあります。
鍼灸は副作用も少なく、体への負担が軽い自然療法として、慢性頭痛にお悩みの方におすすめです。
日常生活でできるセルフケアも、頭痛の予防や改善には欠かせません。
・姿勢を整える:猫背や前かがみの姿勢を避け、デスクワーク中はこまめにストレッチ。
・適度な運動:ウォーキングや軽いヨガで血流を促進。
・目を休める:長時間のスマホ・パソコン作業は定期的に休憩を取るよう心がけましょう。
・温める:首や肩を温めると筋肉の緊張が緩和されます。
・ツボ押し:合谷、風池などのツボをゆっくり指圧してみましょう。
・深呼吸、瞑想:副交感神経を優位にすることで、緊張を和らげます。
頭痛の種類ごとに、適切な対処法と注意点をまとめました。タイプに応じて対応を間違えると、かえって悪化することもあるため、頭痛の性質を理解しておくことはとても大切です。
【対処法】
・首、肩を温める(蒸しタオルやカイロ)
・軽いストレッチや体操で筋肉の緊張をほぐす
・深呼吸やリラクゼーションで心身の緊張を緩和
【注意点】
・冷やすのは逆効果になることが多いため避ける
・痛み止めに頼りすぎると慢性化しやすい
・長時間同じ姿勢(スマホ・PC作業)を続けないように意識する
【対処法】
・静かな暗い部屋で安静にする
・冷やす(額やこめかみ、後頭部を冷やすと血管の拡張を抑えやすい)
・カフェインを少量摂る(初期には有効な場合あり)
・ツボ刺激:太陽・合谷・内関など
【注意点】
・入浴や運動、マッサージで悪化することがある(血管がさらに拡張して痛みが増す)
・カフェインは常用すると「離脱頭痛」を引き起こすことがあるため注意
・発作時は刺激を避け、静かに過ごすことが優先
【対処法】
・発作時は静かにしていても痛みが治まらないため、専門的な対処が必須
・鍼灸は発作時より、予防・体質改善に用いると効果的
【注意点】
・一般的な鎮痛剤が効かないことが多く、市販薬では対応できない
・飲酒や気圧変化が引き金になることがあるため、生活習慣の見直しも必要
・頻繁に起こる場合は、神経内科や頭痛専門医へ早めの相談を推奨
*鍼灸師は薬に関しての助言はできないため、必要な際は専門医への受診もおすすめします
頭痛は「たかが頭痛」と見過ごされがちですが、慢性化すると日常生活の質を大きく下げてしまいます。薬に頼る前に、自分の体と向き合うこと。そして自然なケアで体の声に耳を傾けることが、根本的な改善への第一歩です。
頭痛はタイプによって「温める・冷やす」「動かす・安静にする」などの対処法が真逆になることがあります。自分の頭痛がどのタイプにあたるのかを把握し、それに応じた対応をとることが、悪化を防ぎ、快適な日常を取り戻す近道になります。
また、どのタイプであっても、体のバランスを整える鍼灸治療は頭痛の改善・予防をサポートできる有効な手段です。
お困りの方は渋谷α鍼灸院までご相談ください。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 18:11 / 院長コラム