突発性難聴

突発性難聴とは

突発性難聴は、ある日突然、片耳の聞こえが急激に悪くなる病気です。多くは数時間から1日以内に発症し、耳の詰まり感や耳鳴り、めまいを伴うことがあります。原因が明らかでない「感音性難聴」の一種で、年間人口10万人あたり約30人程度が発症すると言われています。多くは片耳のみですが、稀に両耳に起こることもあります。発症から早期に治療を開始するほど回復の見込みが高く、特に発症1週間以内が重要な治療のタイミングです。

発症のメカニズム

突発性難聴は、耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」や、その内部を流れる血流や神経の働きに急激な障害が起こることで発症すると考えられています。蝸牛は音を電気信号に変えて脳へ送る役割を担い、血流が豊富で繊細な構造です。

血流障害が起こると、酸素や栄養が不足し、感覚細胞が機能低下や損傷を受けます。また、内耳を支配する聴神経の炎症や免疫異常も発症に関与するとされています。これらの変化は短時間で起こり、一度障害を受けると回復しにくい性質があります。

原因

突発性難聴の明確な原因はまだ解明されていませんが、次のような要因が関与すると考えられています。

ウイルス感染:風邪やインフルエンザ後に発症するケースがあり、内耳での炎症が聴覚に影響すると推測されています。

血流障害:ストレスや過労、冷え、生活習慣などで内耳の血流が低下すると酸素不足が生じます。

自己免疫反応:免疫系が誤って内耳の組織を攻撃してしまう可能性があります。

ストレス、自律神経の乱れ:過度な緊張や睡眠不足が血流や神経伝達に影響します。

症状

・急激な聴力低下(片耳が多い)

・耳鳴り(キーン、ザーといった高音や低音)

・耳の詰まり感(水が入ったような圧迫感)

・めまい、ふらつき(約3割の患者にみられる)

症状の程度は軽度から、ほとんど聞こえない状態までさまざまです。耳鳴りやめまいは生活の質に大きく影響し、心理的負担を強めることもあります。

自律神経との関係

突発性難聴は、自律神経のバランスと深く関わります。内耳の血管は交感神経と副交感神経によって調節されていますが、ストレスや過労により交感神経が過剰に働くと血流が収縮し、内耳の酸素供給が低下します。

また、ストレスによる副交感神経の低下は、内耳の回復機能を妨げます。つまり、自律神経の乱れが血流障害や炎症を引き起こし、突発性難聴の発症や回復遅延につながると考えられます。

西洋医学的観点

西洋医学では、突発性難聴は耳鼻咽喉科での早期治療が基本です。

ステロイド薬:炎症を抑え、内耳の浮腫を軽減

血流改善薬:内耳の血流を促進

ビタミンB12製剤:神経修復の補助

高気圧酸素療法:酸素を多く体内に取り込み、内耳の酸素不足を改善

治療は多くの場合、発症から2週間以内が効果的とされます。遅れるほど回復率が下がるため、早期受診が重要です。

治療の経過と予後

突発性難聴は、治療開始の時期と症状の重さによって経過が異なります。

・早期治療(1週間以内):約3〜5割がほぼ回復

・中等度〜重度:回復まで数週間〜数ヶ月かかる場合もある

・遅延受診:聴力の完全回復は難しく、耳鳴りや聴力低下が残ることもある

また、めまいや耳鳴りが長期的に残るケースもありますが、リハビリや鍼灸治療で症状軽減が期待できます。

東洋医学的観点

東洋医学では、突発性難聴は「腎虚」「肝鬱気滞」「痰湿」などの体質的要因と、ストレスや過労による「気血の滞り」が重なって発症すると考えます。

腎虚:加齢や慢性疲労により生命エネルギーが不足し、耳の機能が低下

肝鬱気滞:精神的ストレスにより気の巡りが悪くなり、耳への血流が低下

痰湿:水分代謝の乱れが耳の中に「濁り」を生じさせ、感覚機能を阻害

治療では体質の改善と気血の巡りを整え、内耳の回復を促すことを目的とします。

鍼灸治療の目的、施術部位、効果、通院頻度

目的

突発性難聴の鍼灸治療では、症状そのものだけでなく、発症背景にある血流障害や自律神経の乱れを改善することを目的とします。内耳は非常に繊細で再生力が限られており、障害後は時間との勝負になります。

鍼灸治療では以下の効果を期待できます。

・内耳・脳への血流促進により酸素と栄養を届ける

・自律神経の調整で交感神経の過緊張を緩和し、副交感神経の働きを高める

・耳鳴り・めまいの軽減による生活の質改善

・全身の疲労回復と免疫機能の安定化

特に発症初期〜2週間以内は、血流改善と炎症の沈静化を迅速に図ることで、聴力回復の可能性が高まります。

施術部位

突発性難聴の施術は「局所(耳周囲)+遠隔(全身)」を組み合わせます。

耳周囲(局所)

・翳風(えいふう):耳の後ろに位置し、内耳血流改善や耳鳴り軽減に有効

・聴宮(ちょうきゅう)、聴会(ちょうえ):耳の前側にあり、聴覚機能と気血の巡りを整える

・完骨(かんこつ):後頭部に位置し、めまいや耳の奥の違和感に効果的

頭部・頚部

・百会(ひゃくえ):頭頂部にあり、自律神経の安定と脳循環の改善

・風池(ふうち)、天柱(てんちゅう):後頭部と首の境目で、内耳の血流・リンパ流改善

全身(遠隔)

・合谷(ごうこく):手の甲、全身の血流と気の巡りを調整

・足三里(あしさんり):免疫力向上と体力回復

・太渓(たいけい):腎経の要穴で、耳の機能回復に関与

・内関(ないかん):めまいや吐き気の緩和、自律神経調整

耳周囲だけでなく全身調整を行う理由は、内耳の機能低下は局所の問題だけでなく、全身の循環や神経状態の影響を強く受けるためです。

施術方法

・鍼:細い鍼を使用し、痛みや刺激は最小限に抑えます。

・置鍼:10〜20分程度、血流が安定するまで鍼を置く

・温灸、灸頭鍼:局所の温熱刺激で血行促進、炎症の回復を助ける

・低周波鍼通電(パルス療法):耳周囲〜首周囲に微弱な電気刺激を加え、血流と神経機能を活性化

・全身調整鍼:自律神経・免疫系に働きかける遠隔経穴への施術

効果

聴力回復の補助:血流改善により酸素と栄養が内耳に届きやすくなる

耳鳴り軽減:神経の過敏状態を鎮め、耳鳴りの音量や不快感を減らす

めまい、ふらつき改善:前庭系の機能回復と脳循環安定化

ストレス軽減と睡眠改善:自律神経調整による精神的安定

再発予防:全身の巡りを整え、内耳環境を健やかに保つ

通院頻度と期間

発症初期は週2〜3回、その後は週1回程度に減らし、経過を見ながら調整します。回復が安定するまで1〜3ヶ月程度を目安にします。

・急性期(発症〜2週間):週2〜3回、集中的に施術し回復を促進

・回復期(2週間〜2ヶ月):週1〜2回、残存症状の改善と体質調整

・安定期(3ヶ月以降):月1〜2回のメンテナンスで再発予防

全体として、1〜3ヶ月程度を目安に通院計画を立てますが、症状の重さや回復具合によって柔軟に調整します。

このように、鍼灸は突発性難聴において「西洋医学の治療を補完し、回復力を底上げする手段」として非常に有効です。

セルフケア

早期受診:症状が出たらすぐ耳鼻科へ

・安静と睡眠:内耳の回復には十分な休養が必須

・ストレス管理:深呼吸、軽いストレッチ、瞑想などで自律神経を整える

・冷え対策:首・耳・足元を温め、血流を促進

・音環境の工夫:静かすぎる環境よりも、小さな環境音が耳鳴り緩和に有効な場合も

・バランスの取れた食事:ビタミンB群、鉄、亜鉛など耳の健康に関わる栄養を意識

このように、突発性難聴は早期発見と治療が何より重要です。西洋医学による集中的な治療と並行して、鍼灸で全身の巡りと自律神経を整えることで、回復を助け、後遺症や再発のリスクを減らすことが期待できます。

Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 12:39 / 院長コラム

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