2025年5月22日
「グルグルまわるめまい」「耳が詰まったような感じがする」「音が聞こえづらい」などの症状が繰り返し現れる病気、それがメニエール病です。特に30代〜50代に多く、女性のほうがやや多い傾向があります。発作的にめまいが起こるため、日常生活や仕事に支障をきたすことも少なくありません。
めまいや耳鳴りを訴える患者さんの中に、医師からメニエール病と診断された方が鍼灸院に来院されるケースが増えています。
メニエール病の特徴は、内耳(ないじ)という耳の奥にある器官の障害です。内耳は聴覚と平衡感覚を司る重要な場所です。内耳の中にはリンパ液という液体があり、この流れが正常であれば問題ないのですが、何らかの理由でリンパ液が過剰にたまり、「内リンパ水腫」という状態になると、平衡感覚が乱れたり、音の伝達に支障が出たりします。
その結果、激しい回転性のめまいや耳の閉塞感、耳鳴り、難聴といった症状が引き起こされるのです。
残念ながら、明確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
・ストレスや過労
・睡眠不足
・自律神経の乱れ
・塩分の過剰摂取
・遺伝的要因
・アレルギーやウイルス感染
特に、精神的ストレスや生活習慣の乱れが引き金になるケースが多く、心と体のバランスが深く関係している病気と言えるでしょう。
主な症状は次の4つです。
・回転性めまい
突然、天井や周囲がグルグル回るような強いめまいが数十分から数時間続きます。
・耳鳴り
「ジーッ」や「キーン」といった音が耳の中で鳴るように感じます。
・難聴
主に片耳の聞こえが悪くなります。初期は一時的ですが、進行すると恒常的になることもあります。
・耳の閉塞感
耳が詰まったような感じや、水が入ったような違和感があります。
これらの症状が繰り返し現れるのが、メニエール病の特徴です。
メニエール病の最大の特徴は、症状の「繰り返し」にあります。最初はめまい発作が数ヶ月に一度程度でも、次第に頻度が増え、生活の質(QOL)を著しく低下させることもあります。
また、ストレスや天候、気圧の変化に敏感になる傾向があるのも特徴です。
メニエール病の背景には、自律神経の乱れが大きく関わっていると考えられています。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」からなり、体温調整や血圧、内臓の働き、ホルモンバランスなどをコントロールしています。現代人はストレスや不規則な生活でこの自律神経が乱れやすく、内耳の血流やリンパの流れにも影響が出ます。
鍼灸治療がメニエール病に効果を発揮する理由のひとつは、この自律神経のバランスを整える作用があるからです。
西洋医学では、まず薬物療法が行われます。主に以下のような薬が処方されます。
・めまいを抑える薬(抗めまい薬)
・利尿剤(リンパ液を減らす目的)
・血流改善薬
・抗不安薬や睡眠導入剤
重症の場合は手術が選択されることもありますが、これはあくまで最終手段です。また、生活習慣の見直しも強く勧められます。
東洋医学では、メニエール病は「水毒(すいどく)」「肝気鬱結(かんきうっけつ)」「腎虚(じんきょ)」などの概念で捉えられます。
・水毒:体内の水の巡りが悪くなり、内耳に水分がたまる。
・肝気鬱結:ストレスによって気の流れが滞り、体の調和が乱れる。
・腎虚:加齢や体力低下によって腎の働きが弱まり、耳や平衡感覚に影響する。
東洋医学は症状そのものだけでなく、体質や心の状態も含めて全体を整えるアプローチをとります。
鍼灸は、メニエール病の症状緩和と再発予防の両方に効果が期待できます。
特に以下のような点で効果的です。
・めまいの軽減:内耳の血流やリンパの流れを改善。
・耳鳴りの緩和:ストレスを軽減し、自律神経を調整。
・全身の体調管理:体質を整え、再発を予防。
よく使われるツボには、「内関(ないかん)」「風池(ふうち)」「聴宮(ちょうきゅう)」「腎兪(じんゆ)」などがあります。
また鍼灸は副作用が少なく定期的な施術を通じて、体質そのものを改善していくことが可能です。
ご自身でできるセルフケアをご紹介します。
・規則正しい生活
睡眠をしっかりとり、リズムある生活を心がけましょう。
・ストレスマネジメント
深呼吸、瞑想、散歩、趣味の時間など、自分なりのリラックス法を見つけましょう。
・塩分の摂取を控える
内リンパの過剰な貯留を防ぐためにも、減塩が効果的です。
・適度な運動
ウォーキングやストレッチで血流を促進し、自律神経のバランスを整えます。
・耳まわりのマッサージ
耳の後ろや首筋を優しくほぐすことで、血流改善につながります。
メニエール病は「完治が難しい」と言われることもありますが、うまく付き合っていく方法は確実に存在します。西洋医学だけに頼らず、鍼灸や東洋医学の力を合わせることで、より良い生活を目指すことができます。
「最近めまいが増えた」「耳鳴りが気になる」など、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 16:58 / 院長コラム