2025年5月14日
突発性難聴は、ある日突然、片側の耳の聴力が急に低下する病気です。朝起きたら耳が聞こえにくくなっていた、電話の音が片耳で聞き取れない、といったケースが多く見られます。
さらに、めまいや耳鳴り、耳閉感(耳が詰まったような感覚)を伴うことが多く、発症後すぐに適切な治療を開始しないと、聴力が戻らない可能性もあります。
東洋医学では、突発性難聴は「耳聾(じろう)」「耳鳴」などの病証に分類されます。
耳は「腎」との関係性が深く、「腎精」が不足すると聴力が衰えると考えられています。
また、ストレスや疲労などで「肝気」が鬱滞し、気血の巡りが悪くなることでも耳の異常が生じると考えられています。
他には、「風邪(ふうじゃ)」が耳に侵入した、あるいは「痰湿(たんしつ)」が上擾(じょうじょう=上に上がってかき乱すという意味)して耳の経路をふさいだ結果、突発性難聴が起きるという弁証もあります。
突発性難聴は、「感音難聴」というタイプに分類され、内耳(特に蝸牛)や聴神経の異常により発症します。原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のような要因が考えられています。
内耳にウイルスが感染することで炎症が起こり、聴覚に関わる神経や細胞が障害されると、突発的に聴力が低下します。主に以下のようなウイルスが関与すると考えられています。
単純ヘルペスウイルス(HSV)
帯状疱疹ウイルス(VZV)
サイトメガロウイルス(CMV)
ムンプスウイルス(おたふく風邪)
内耳は非常に微細な血管網によって栄養と酸素を受け取っています。この血流が何らかの原因で急激に滞ると、蝸牛内の有毛細胞がダメージを受け、難聴が起こります。
原因となりうる要因
血管の痙攣(ストレス・寒冷刺激)
血栓(血液が固まりやすくなる状態)
動脈硬化(加齢・高血圧・糖尿病など)
自律神経の乱れによる局所的血流の変化
本来は体を守る免疫が、誤って自分の内耳の組織を「異物」と認識して攻撃してしまう状態です。
疑われる病態
自己免疫性内耳病(AIED)
関連する全身性自己免疫疾患(SLE、関節リウマチ、ベーチェット病など)
突発性難聴の患者の多くは、発症直前に強いストレスや精神的・肉体的な疲労を経験していることが多い傾向にあります。
交感神経が過剰に緊張することで血管が収縮し、内耳への血流が低下したり、睡眠不足などによる不調でホルモンバランスが崩れて内耳の恒常性が保てなくなり、症状が出る場合があります
突然の片側性の難聴(稀に両側性の場合があります)
耳鳴り(高音または低音)
めまい、ふらつき
耳閉感(幹が困った感じ)
頭重感や集中力の低下
また好発年齢として、30代~60代に多く、男女差はほとんどありませんが、
ストレスが多い働き盛りの世代に多く見られます。
突発性難聴は「耳の脳卒中」とも呼ばれ、治療のタイミングが重要です。発症から1週間以内に治療を開始できるかどうかで、回復の程度が大きく変わります。主な治療は以下の通りです。
もっとも標準的かつ効果的とされる治療法です。
主に、プロドニゾロンなどの内服薬、又は点滴で投与されます。
炎症を抑え内耳のむくみや自己免疫反応の鎮静化を目的とし、発症後48~72時間以内に開始することが望ましいとされています。
内耳への血流改善を目的とし、プロスタグランジン製剤やイソソルビド、ペラプロストなどが用いられます。
また、末梢血管拡張作用により、内耳の微小循環を改善し、感音細胞の回復を促進させます。
ビタミン12などは神経の再生を促進させる効果があるとされ、補助的に使われることが多いですが、聴神経や有毛細胞の修復を促進するためその役割として使われることもあります。
当院では、鍼灸治療を行い、耳の周囲の血流を改善させ、内耳や聴神経の機能回復を促進させるとともに、全身の気血の巡りと、臓腑の働きを整えることを目的としています。
また、突発性難聴は首の筋肉の緊張や血流、顎を動かす筋肉(咬筋や側頭筋)が過緊張することで、顎関節のズレが生じ、耳の圧迫感や耳鳴りを悪化させる場合もあります。
そのため当院では、局所的に診るのではなく、全身を診させていただき、付随して緊張している筋肉や悪化の原因になりうる箇所にもしっかりと施術を行わせて頂きます。
また、自律神経測定器を使い、自律神経の状態を正確に判別したうえで、問診、脈診、触診等を行い、一人一人に合わせた治療を行わせていただきます。
日常生活の中でストレスを避け、食事や休息に気を配ることが再発予防につながります
以下に実践しやすいセルフケアをいくつかご紹介しますので、積極的に行ってみてください。
睡眠不足や過労は耳の機能を低下させます。
7~8時間の睡眠をとれるように心がけましょう。
ストレスが加わることで、自律神経の乱れが生じ、内耳の血流を悪化させてしまいます。
呼吸法や瞑想、軽い運動をすることがおすすめです。
耳の周囲が冷えることにより、内耳の血流障害が発生し、機能が低下することがあるので、冷風をあてることは避け、なるべく温めるようにしましょう。
過度な音刺激は耳の疲労に繋がってしまうため、ヘッドホンやイヤホンの長時間の使用を避けたり、静かな環境で耳を休ませる時間を作ってあげることが大切です。
甘いものや脂っこいものは、血糖値を上昇させたり血行を悪化させ症状の回復を妨げる恐れがあるので控えめに摂るようにしましょう。
また、黒ごまや黒豆、小松菜、レバーなどの血を補う食べ物を摂ることにより、内耳への血液の供給や血液循環を手助けとなるので積極的に摂るようにしましょう。
最後に、突発性難聴は、早期の対応が予後の状態に大きく関与する疾患です。
西洋医学による迅速な治療と、東洋医学による体質改善・根本的な治療を組み合わせることでより回復効果が期待できます。
一人一人の状態に合わせた施術をさせていただきますので、お困りの際は当院に足を運んでみてください。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 11:54 / 院長コラム