【過敏性腸症候群】腹痛とトイレで仕事や勉強に集中できない!

2025年5月26日

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、明らかな器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感、下痢や便秘といった腸のトラブルが慢性的に続く疾患です。

特に現代社会においては、若年層から中高年まで幅広い年代で悩む方が多く、その背景にはストレス生活習慣の乱れが複雑に関係していると考えられています。

症状は大きく4つのタイプに分かれます。

①下痢型

突然の便意に襲われてトイレに駆け込むことが多く、特に通勤・通学中など外出時の不安感が強くなるのが特徴です。

②便秘型

お腹が張って苦しくなるほど便が出にくく、出てもスッキリしないことが多いと訴えられます。

③混合型

下痢と便秘が交互に現れるタイプで、日によって症状が変動するため、生活への影響がより深刻になりやすい傾向があります。

④分類不能型

はっきりと型には当てはまらない不規則なパターンもあります。

どのタイプであっても共通するのは、

◯腹部の不快感膨満感

ガスが溜まりやすい

何度もトイレに行く

など、腸のリズムが自分の意志とは関係なく乱れることへの苦痛です。

他にも、慢性的な疲労感集中力の低下肩こり睡眠の質の低下など、全身に波及する不調を訴える方も多いのが特徴です。

さらに、症状が起こる状況にも一定の傾向があり、緊張や不安を感じる場面、例えば会議試験発表人混みの中などで症状が誘発されることも少なくありません。

そのため、過敏性腸症候群は単に「お腹の不調」として片づけるのではなく、心・身体・生活全体」に関わる問題として捉える必要があります。

 

過敏性腸症候群の東洋医学(下痢型・便秘型・混合型・不定型の4分類)

東洋医学では、過敏性腸症候群(IBS)を「脾胃(消化器系)」と「肝(自律神経・情緒)」の乱れからくる全身的な機能失調としてとらえます。同じIBSでも症状の出方によって体質・証(東洋医学における症状名)の違いがあり、施術方針も変わってきます。ここでは西洋医学的分類(4タイプ)に即した東洋医学的視点を紹介します。

【1】下痢型(主に肝気犯脾・脾腎陽虚)

下痢型IBSは、東洋医学において「肝気犯脾(かんきはんぴ)」と「脾腎陽虚(ひじんようきょ)」が主な原因とされます。

ストレスが強いと、肝が過剰に緊張し、脾の働きを妨げることで消化が乱れ、下痢が起こると考えられます。

さらに冷えや体力不足があると腎の陽気が衰え、明け方の下痢や便意を抑えられないといった症状も見られます。

主な症状:突然の腹痛と下痢・ストレス時の悪化・冷えや疲労感・明け方の下痢

 

【2】便秘型(主に肝鬱気滞・血虚腸燥)

便秘型IBSでは、「肝鬱気滞(かんうつきたい)」による気の停滞と、「血虚腸燥(けっきょちょうそう)」による潤い不足が原因とされます。

イライラや不安などの情緒的なストレスが気の流れを妨げて便の移動が滞ったり、体質的に血が不足して腸が潤わず、硬い便が出にくくなったりするのが特徴です。

主な症状:コロコロした便・排便に時間がかかる・イライラ便意があるのに出ない

 

【3】混合型(肝脾不和・脾虚気滞)

混合型IBSは、ストレスの影響で肝と脾のバランスが乱れやすく、腸の運動が過剰になったり低下したりと不安定な状態です。

「肝脾不和(かんぴふわ)」の状態であり、食事やストレスによって症状が変動します。ガス張り、腹痛などの不快感が強く、便通は日によって違います。

主な症状:下痢と便秘の交互・お腹の張り・ストレスで悪化・げっぷやガスが多い

 

【4】不定型(気血両虚・気滞血瘀)

不定型IBSでは、症状がはっきりしない、もしくは複数の症状が重なっているケースです。

東洋医学では「気血両虚(きけつりょうきょ)」によって体のエネルギーも栄養も不足しており、さらに「気滞血瘀(きたいけつお)」によって腸の機能が停滞していると考えます。

主な症状:下痢や便秘が日によって違う・全身のだるさ情緒の不安定集中力の低下

過敏性腸症候群の原因

過敏性腸症候群(IBS)の大きな特徴は、「検査では異常が見つからないのに、症状がつらい」という点です。

つまり、腸の構造そのものには異常がなく、内視鏡検査などでも炎症や潰瘍といった器質的疾患が確認されないにもかかわらず、慢性的な腹痛や排便異常が続きます。

その原因は非常に多岐にわたり、身体的な要因だけでなく、心理的・社会的な要素も密接に関係していることが近年の研究で明らかになっています。

最も代表的な要因のひとつは「ストレス」です。

強い緊張、職場や家庭での人間関係の悩み、将来への不安などが、自律神経のバランスを乱し、腸の運動や分泌機能に影響を与えると考えられています。

腸は自律神経によりコントロールされており、「交感神経」と「副交感神経」のバランスが崩れることで、腸の動きが過剰になったり鈍くなったりします。これが、IBSにおける便秘や下痢、腹部膨満感といった症状の一因となります。

また、腸と脳の双方向のやりとり(脳腸相関)も、IBSの発症や悪化に大きく関係しています。緊張するとお腹が痛くなる、という経験をされた方も多いかと思いますが、これはまさに腸と脳が密接に関わっている証拠です脳のストレスや不安が腸に伝わり、過敏な反応を引き起こすのです

このように、過敏性腸症候群は「心と体のつながり」が非常に色濃く表れる症状です。

だからこそ、薬だけに頼らず、ストレスマネジメントや生活習慣の見直し、体質改善など、多角的なアプローチが求められます。

 

当院での施術

当院では、過敏性腸症候群(IBS)の患者さまに対して、「お腹の調子」だけでなく、心身のバランスの乱れ」そのものにアプローチする施術を行っています。

IBSは、ストレスや自律神経の乱れ、生活習慣の積み重ねによって起こる複雑な不調であり、一人ひとりの症状や体質、生活環境に合わせたオーダーメイドの治療が必要です。

施術では主に鍼とお灸を用い、「気(エネルギー)」と「血(けつ)」の巡りを整えることで、腹部の緊張を和らげていきます。

IBSの患者さまは、首や肩まわりのこわばり背中の緊張も強く、これらを緩めることで副交感神経が優位に働き、内臓の働きも整いやすくなります。

施術を重ねることで、緊張やストレスに対して身体が過敏に反応しなくなり、腸の安定性も徐々に増していきます。

そのため、症状が強いときだけでなく、波が落ち着いているときでも「体質改善」の目的で定期的に通っていただく方が多いです。

改善と再発予防のためには、施術と合わせて日々の生活の中で「自分の体と心をいたわる意識」を持っていただくことが重要になります。

 

過敏性腸症候群の病院での治療とセルフケア

過敏性腸症候群(IBS)の治療において、病院での対応は主に「症状を軽減する薬物療法」と「生活習慣の見直し」を中心に行われます。

まず、便通のタイプ(下痢型・便秘型・混合型)に応じた薬が処方され、腸の動きを調整したり、腹痛を和らげたりすることを目的とします。

たとえば下痢型の方には腸の動きを抑える薬や整腸剤、便秘型の方には緩下剤や水分を腸に集めるタイプの薬が用いられることがあります。

また、ストレスや不安が大きく関与していると考えられる場合には、抗不安薬や抗うつ薬などを少量使って、自律神経のバランスを整えることもあります。

一方で、IBSの治療には薬だけでは不十分なことも多く、「セルフケアの積み重ね」が症状の安定には非常に重要です。

具体的には、食生活の見直し、ストレス対処法の習得、運動習慣の確立、睡眠の質の向上といった基本的な生活習慣の改善が求められます。

食事では、FODMAP(発酵性の糖質)と呼ばれる腸内ガスを増やす食材(玉ねぎ、小麦、乳製品など)を控える「低FODMAP食」が効果的な場合もあります。

ストレスへの対応としては、認知行動療法(CBT)やマインドフルネス、呼吸法や瞑想などが効果的とされています。緊張しやすい場面で深呼吸をしてみる、1日5分だけ静かに座って呼吸に意識を向けるといった小さな習慣が、自律神経を整える助けになります。

運動については、激しい運動である必要はなく、毎日の散歩や軽いストレッチ、ヨガなど、身体を適度に動かすことが腸のリズムを安定させるのに効果的です。特に、朝の軽い運動は1日の腸の動きを整える起点になります。

そして、睡眠は心身の回復に直結するため、就寝前のスマホ使用を控える・寝室環境を整える・決まった時間に寝る習慣などを意識するとよいでしょう。

当院でも、これらのセルフケアと並行して鍼灸施術を行うことで、薬に頼りすぎず、より自然な形での体質改善を目指している方を多くサポートしています。自分の体調を理解し、向き合い、整えていくという姿勢が、過敏性腸症候群の根本的な改善へとつながっていきます。


Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 16:00 / 院長コラム

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