2016年5月27日
アキレス腱炎・周囲炎は、主にスポーツ障害と言われており、健康志向の高まる現代では多くなってきている疾患のうちの一つです。 ランニングやゴルフが日課という方やまた立ち仕事が中心の方にも多いです。そういった方の多くは、アキレス腱辺りが痛くても何も処置をせずに放置して悪化させることがほとんどです。
症例
50代 男性
普段から毎朝ウォーキングすることが日課となっており、週末にはゴルフをすることが多かった。ある朝から右足のアキレス腱辺りの痛みが出るようになってきて整形外科を受診したところアキレス腱炎と診断され、湿布薬を処方された。 しばらくの安静を勧められたため2週間ほどウォーキングとゴルフを控えていたら痛みがなくなった。しかし、またウォーキングを再開すると痛みが出て当院を受診された。
治療経過 アキレス腱周囲の治療のほかに腰部やふくらはぎの筋肉の張りも見られたため、それらもアキレス腱の負担を増強させていると判断して腰部・ふくらはぎも施術していきました。 およそ3日おきの治療を3週間ほど続けていただき、その間は運動を控えていただきました。
<1回目>
治療後、テーピングも施したところ歩くだけでも痛く、施術前は引きずっていた右足は正常に戻り、普通に歩行できるようになった。
<2回目>
前回治療後、1日は痛みが引いていたように感じたがまた再び痛みが出た。今回の治療後も痛みは消失。
<3~5回目>
治療効果が回を重ねるごとに出てきて痛みを感じることがなくなってきた。5回目治療後、軽くウォーキングを再開
<6回目>
ウォーキングと週末にゴルフをしても痛みは出なかった。
アキレス腱という言葉を一度は耳にされたことがあるかと思いますが、どういった働きをするかあまり知られていません。
アキレス腱は踵骨腱とも言われており、ふくらはぎにある腓腹筋とヒラメ筋を踵まで付着させる働きがあります。アキレス腱は人体最大の腱であり、アキレス腱が切れてしまうと腓腹筋やヒラメ筋の働きがままならなくなり、歩行困難やジャンプするなどの動作ができなくなります。
そのアキレス腱が何らかの原因により、微細な部分断裂などを起こすことによって炎症が起きると痛みが発生してアキレス腱炎という病態となります。
また、アキレス腱はパラテノンという結合組織に包まれており、アキレス腱が損傷するのを守っています。そのアキレス腱周囲にあるパラテノンが損傷を受けると炎症となり、痛みを発生させてアキレス腱周囲炎という病態となります。
アキレス腱は、人体で最大の腱で強靭に作られています。その分弾力性がなく、ふくらはぎからの負担が大きくかかる部分でもあります。歩行やジャンプにとても重要な足関節の上下運動の際に大きな役割を果たします。 筋肉と比べると腱は血液の流れが悪い組織です。
そのため一度、損傷を受けると回復にも時間がかかります。また断裂してしまうと自然治癒は望めません。 腱は、血流が悪いということで老化の影響を大きく受けます。老化と体重の増加でアキレス腱に負担がかかり、運動をあまりしない方の中にもアキレス腱炎やアキレスけん周囲炎が見られることがあります。
アキレス腱炎・周囲炎の症状として主に
ⅰ)疼痛
ⅱ)腫れ
ⅲ)軋轢音
が挙げられます。
ⅰ)疼痛
踵骨のアキレスけん停止部に痛みが出ることが多いです。また、内くるぶしのやや上方のにも痛みが出ます。歩きはじめや寝起きなど初期動作時に痛みを強く感じるのもアキレス腱炎・周囲炎の特徴です。初期動作痛を何も処置せず放っておくと痛みが悪化して慢性痛みとなることもあります。
無理して運動などを続けているとアキレス腱が瘢痕組織化してアキレス腱が硬くなり、さらに痛みを感じやすくなるので注意が必要です。
ⅱ)腫れ
痛みを我慢して運動などを続けているとアキレス腱が部分的に腫れて局所熱感を伴うこともあります。目で見て明らかに腫れている場合はまずは炎症を早く引かせるためにアイシングを行うようにしましょう。
ⅲ)軋轢音
アキレス腱周囲の炎症が顕著な場合には、足首を曲げ伸ばしすることによってギシギシするような軋轢音を聞くことができます。
アキレス腱炎・周囲炎はいわゆるオーバーユース症候群の一つと考えられ、ランニングや立ち仕事などでふくらはぎやアキレス腱への負荷の大きくなることで起こりえます。よってその負荷を軽減させて負荷のかかる頻度を落とすことがとても重要と考えられています。
また老化や日々の運動不足などによるアキレス腱部の柔軟性の欠如や靴が自分の足と合わないなどの外的要因などもアキレス腱炎・周囲炎の原因となると考えられています。
東洋医学ではアキレス腱炎・アキレス腱周囲炎は、痛みを起こしている部分の気血の運行がスムーズにいかずに気血が滞り、それが痛みや腫れの原因となると考えられています。
またアキレス腱は経絡でいいますと『膀胱経』に沿って走行しているため膀胱経の病変ともとらえられることもあります。 外的な要因で考えると寒さの風による「風寒の邪気」を受けた時に発症する可能性が高くなります。長時間のランニングや長い間の立ち仕事をした時などにも気血は滞りやすく、アキレス腱炎・周囲炎の原因となります。
使い過ぎによることが第一の原因と考えられますからとにかく使わないように安静にすることが一番です。
また急性期には安静とともに炎症を早く治めるためにアイシングなどの保存療法を施します。 湿布や飲み薬での消炎鎮痛作用をねらった治療はある程度有効と考えられています。腫れや炎症に伴い疼痛がひどい場合には腱周囲組織にステロイ注射を行う場合もあります。またインソール療法でかかとの部分を高くしてアキレス腱への負担を軽減させる治療法もあります。
腫れ・痛みが引いて来たらストレッチでアキレス腱を上すことも重要です。安静休養のためあまり動かずにいるとアキレス腱は硬くなり、伸びづらくなり、再発してしまう可能性もあります。回復期には急に運動することを避けて運動前にしっかりとストレッチすることを心掛けましょう。
当院の施術ではまずアキレス腱周囲のツボを用いて痛みを軽減させる電気鍼療法やお灸などを施します。アキレス腱周辺に刺さっている鍼に電極をつなげて電気を流すことで鎮痛効果や血流改善が見込めます。そうすることで治癒促進を促します。
当院のアキレス腱炎・周囲炎に対する施術は、アキレス腱周囲のツボや痛みの強い部位に鍼をさして微電流を流すことにより血流改善・鎮痛作用を促します。腫れのひどい場合は、まずその腫れを引かすことを第一に考え、お灸なども施していきます。 アキレス腱炎・周囲炎は五臓六腑の『膀胱』と『肝』に深く関係しているので肝と膀胱に関するツボを用いて肝血や膀胱の気を補うことやアキレス腱の気血の流れをよくします。 また、体内に侵入した『風寒の邪気』を除去する治療も行っていきます。
必要であればテーピングや日々のケアでできるストレッチ法や日常生活での注意点もアドバイスしていきます。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 11:58 / 院長コラム