耳管開放症でお悩みの方は鍼灸を

2025年1月22日

耳管開放症とは

 

耳管開放症とは、耳と鼻をつなぐ「耳管」という管が開いたままになってしまう病気です。通常、耳管は閉じていて、あくびや飲み込む動作をしたときだけ一時的に開きます。しかし、この病気になると耳管が開きっぱなしになるため、自分の声や呼吸音が耳の中で響いて聞こえる「自己聴覚」や、耳が詰まった感じがする「耳閉感」などの症状が現れます。特に痩せ型の方や、運動後、体重の急激な減少、妊娠中などに起こりやすいとされています。

軽い症状の場合は体を横にする、こまめに水を飲むなどで一時的に楽になることがあります。まずは、自己判断せず耳鼻科の受診をおすすめいたします。

 

原因

  • 体重減少
    急激なダイエットや病気による痩せすぎで、耳管周囲の脂肪や筋肉が減少する。
  • 脱水
    体内の水分不足により、耳管の粘膜が薄くなり閉じにくくなる。
  • ホルモンバランスの変化
    妊娠や更年期など、ホルモンの変化が耳管の機能に影響を与える。
  • 運動や体位変化
    激しい運動や姿勢の変化により耳管の開閉バランスが崩れる。
  • 全身の体調変化
    疲労やストレスが耳管の機能に影響を与える場合がある。
  • 先天的・構造的な要因
    生まれつき耳管の形状や筋肉が弱い場合に発症しやすい。
  • 病気や手術の影響
    中耳や鼻咽腔の疾患、またはその治療が耳管機能に影響を与えることがある。

特に痩せ型の人や体重が急激に変化した人に多く見られます。

 

東洋医学的な解釈

耳管開放症を東洋医学的観点から考えると、身体全体の「気(エネルギー)」、「血(血液や栄養)」、「水(体内の水分)」の不調が原因として捉えられます。

 

①気虚(ききょ)
「気」が不足すると耳管を閉じる筋力が弱まり、症状が出やすくなります。過労や慢性的な疲労、食事の不摂生が原因となることがあります。

 

②陰虚(いんきょ)
体内の「陰(潤い)」が不足し、耳管の粘膜が乾燥して弾力を失うことで、耳管が開きやすくなります。これには体重減少や脱水が影響します。

 

③痰湿(たんしつ)
「水分代謝」が悪化し、耳周辺の流れが滞ると、耳管の機能が乱れる可能性があります。食事の不摂生や冷えなどが要因です。

 

④肝気鬱結(かんきうっけつ)
ストレスや精神的緊張が原因で「肝」の働きが滞り、耳管を開閉する機能に影響することがあります。

 

鍼灸施術

①気虚型(体力不足や筋力低下が関与)

症状:疲労感、脱力感、耳管を閉じる力の低下。
治療法:気を補い、耳管の筋力を回復させる。
主なツボ:

  • 百会:全身の気を高める。
  • 足三里:気を補い、全身を強化。
  • 脾兪:脾を強化し、気を補う。

 

②陰虚型(粘膜の乾燥や体内の潤い不足)

症状:喉や耳の乾燥感、体重減少、脱水症状。
治療法:体を潤し、耳管粘膜を整える。
主なツボ:

  • 腎兪:腎を補い体の潤いを促す。
  • 太渓:腎陰を補強。
  • 三陰交:陰液を補う。

 

③肝気鬱結型(ストレスや精神的な緊張が関与)

症状:ストレス、緊張感、耳の閉塞感が悪化する。
治療法:気の巡りを良くし、精神を落ち着かせる。
主なツボ:

  • 太衝:肝気を巡らせる。
  • 内関:精神安定。
  • 行間:肝気の調整。

 

④痰湿型(水分代謝の不良による耳管機能の低下)

症状:耳の重だるさ、むくみ、鼻づまりが伴うことが多い。
治療法:痰湿を取り除き、水分代謝を改善。
主なツボ:

  • 陰陵泉:湿を取り除く。
  • 豊隆:痰湿を除去。
  • 中脘:胃腸機能を改善し痰湿を軽減。

 

①〜④+局所治療

耳周囲のツボを直接刺激して、耳管機能を高めます。

  • 耳門:耳周辺の血流を促進。
  • 聴宮:耳の機能改善。
  • 翳風:耳の巡りを調整。

 

症例報告

症例1

50代 女性

農作業と保育士の手伝いをしている。最近は、忙しくストレスもよく溜まる。夜も途中で起きてしまうことが多く疲労感が抜けない。一ヵ月前に胃腸炎になりたい7kg減少してしまい、それ以来食べても体重が元に戻らない。

1週間前、急に右耳は外の音に敏感になり、左耳は低い音で耳鳴りがし音がこもって聞こえるようになった。すぐに耳鼻科に行くも、体重減少したのが原因なため体重を戻すように言われた。薬の処方もなかった。

しかし、ご飯を食べても体重は戻らず症状が強くストレスがどんどん溜まっていくいっぽうなので当院に来院された。

1回目

自律神経測定器にて測定を行った。精神的ストレスが非常に強い状態で、交感神経がかなり高くなっていた。

また、触診により手足の冷え、首の硬さがみられた。

測定結果、触診、問診により原因は、ストレスにより自律神経の乱れが起きてしまい筋肉の緊張がかなり出ているため血流の流れも悪く、睡眠の障害になっていると考えた。そのことから、内臓の機能も低下してしまい体重が戻らない事も考えられる。

今回は、自律神経を整える事で臓器の働きを整えるとともに耳への血流の流れをしっかりとつくるように全身的に施術を行っていく事にした。

施術のペースは最初の1ヵ月のみ1週間に1回で行った。

初めは、仰向けにより耳、腕、足、お腹への鍼灸刺激を行った。その後、うつ伏せにより首の後ろ、背中、足への施術+首肩凝りへの施術も行った。

施術直後は、特に変化はなく気持ちよくゆっくり休めたと言っていた。

2回目〜7回目

前回やった後に好転反応がかなり強く出てしまったため、今回は鍼の太さを1段階下げ本数も減らした。

その他は、前回同様で行った。

8回目〜14回目

かなり耳の症状が落ち着いてきたが、右耳の外の音に敏感な感じがまだ残っており、水道の水の音や車のエンジン音などが気になる。

鍼の太さを1回目の時の太さに戻しやや刺激量をあげて行った。

症状が落ち着き始めたので1週間に1回のペースでの施術で行うことにした。

15回目〜17回目

耳の症状は、ほぼないほどに落ち着いた。

2週間に1回に施術のペースを変えた。

18回目

完治したため、他の症状で今は1ヵ月に1回で通っている。


Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 09:04 / 院長コラム

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