2021年2月23日
文字通り意味で一般的に出産後2~3週間頃にうつ病になってしまうことを言います。
産後3~4ヵ月頃になってから起こることもあります。
軽いものを含めると産後の女性の3割が経験するというデータもある程です。
出産後は生活環境の変化やホルモンバランスの乱れ、子育てに対するプレッシャー、赤ちゃんに合わせた生活リズムによる睡眠不足、肉体的な疲労などが重なって起こります。
また赤ちゃんと二人きりの時間が長く、周囲に子育ての協力者がおらず辛さを理解してくれる人が居ないというのも原因の一つです。
出産をした女性(特に初産の女性)は、出産を機に生活環境がガラッと変わります。
赤ちゃんがいると自分の時間を作ることも困難になり休息をとることもままならなくなります。それに加えてご主人の仕事が忙しく育児に協力できない、ご両親も遠方で頼ることができないと育児の全てを女性がすることになり、ますます逃げ場がなくなるので産後うつのリスクが増加します。
里帰り出産をした女性は実家にいた時はご両親の助けがあったのに自宅に帰った途端に全負担が女性にかかるので発症しやすい状況になります。
妊娠から出産にかけて女性のホルモンバランスは大きく変化します。
母乳を出したり子宮を収縮させたりと急激に変わっていきます。
それに加えて寝不足や疲労が重なるのでますます不安定になります。
またホルモンの調整は自律神経とも関りが深いので自律神経が乱れると産後うつのリスク高まります。
「育児を完璧にしなくてはならない」「赤ちゃんが泣いてどうしたらいいかわからない」といったプレッシャーが積み重なり、それに対する相談やアドバイスをくれる人が周りにおらず1人で抱え込んでしまうと精神的にどうにもならなくなり産後うつの発症に繋がります。
肉体的な疲労
単純に身体が元気であればある程度のストレスやプレッシャーなどは跳ね除けることができます。しかし産後は夜中の授乳などで睡眠不足になり抱っこや家事による肉体的な疲労も蓄積していきます。そうなると疲弊しきってしまいストレスに対する抵抗力が低下し産後うつになってしまう要因になります。
産後うつの症状はうつ病とほぼ同じで
① 子育てにやる気が起きない
② 気持ちが落ち込みやすくなる
③ 日常の家事の段取りが考えられない
④ イライラが治まらない、家族に当たってしまう
⑤ 食欲不振
⑥ 頭痛や肩こりの悪化
⑦ 育児がうまくいかないことを責めてしまう
⑧ 便秘や下痢を繰り返す
⑨ 腹痛や胃の痛み
⑩ 外見に気を遣えなくなる
⑪ 色々な事に興味が無くなり、楽しかったことが楽しくなくなる
⑫ 先の事ばかり考えて不安になる
⑬ 不眠や過眠などの睡眠障害
⑭ 落ち込みやすい
⑮ めまいや耳鳴り
といった様々な症状が現れます。これらは症状の一例にすぎず上記以外の症状が現れることもたくさんあります。
うつや産後うつは現れる症状に個人差が大きく同じ「うつ」でも主訴が個人個人で異なるのも特徴です。
また「やる気が起きない」や「落ち込みやすい」「イライラ」などの精神的な症状は本人も気づきにくく、気持ちの問題とされてしまうことも多々あり、身体的な症状が現れる頃には心身共にボロボロになってしまっていることも少なくありません。
産後は心も身体も不安定なので少しでも上記のような異変を感じたら誰かに相談をして理解をしてもらう事が重要です。
主にカウンセリングと心理療法による治療が行われることが多いようです。
産後うつの殆どの方は半年以内に症状が軽減するようですが、産後うつになった方の約3割が半年以上続いてしまうようです。
抗うつ剤の処方も授乳中は副作用の恐れがあるので服用できる薬が限られてしまいます。
五臓でいう肝と腎の機能が低下してしまっているために起こると考えられます。
出産に伴い多くの気血を消耗するので肝の機能が弱り、それを補おうと腎の気を消費するので腎も弱っていきます。
産後の多くは肝血虚・腎虚になることが多く肝血虚ではイライラや不安、気分が落ち込むなどの症状が現れ、腎虚では身体の怠さや物忘れといった症状が現れます。
当院ではまず自律神経のバランスを整える治療から始めます。当院には自律神経測定器があるので客観的に自律神経の状態を知ることができます。その測定器の検査結果をもとに治療を組み立てていきます。
もちろん問診の内容とお身体の疲労度なども含めてトータル的に診させて頂いて治療を行います。
自律神経を治療ことで睡眠の質の向上やホルモンバランスなどの内面を整え、東洋医学的なツボや反応点を使い不足している気や血を補います。そして肉体的に疲労が溜まっている部分を治療しストレスに対する抵抗力を向上させます。
30代女性
産後間もなく朝が起きられなくなり、家事に対するやる気も起こらず疲労も限界に達していたが薬に頼る治療に抵抗があり来院された。
家庭環境は夫が仕事で忙しいためほとんど家におらず、自身の実家も遠方で両親に頼ることもできず一人で育児と家事に追われる毎日で息つく暇も無い状態だった。
第一子ということで神経質になっていたことに加え、元々完璧主義な性格もあり、うつ症状を「だらしない」と思いかなり自分を追いこんでしまっていた。
妊娠、出産の前から事務仕事をしており慢性的な頭痛や肩こりに悩まされていた。
産休を機に頭痛や肩こりは一時的に治っていたが産後の生活の変化や疲労により再発してしまった。
頭痛や肩こりが悪化すると共にうつ症状も次第に強くなってしまった。
検査・触診
自律神経測定の結果は自律神経のバランスは整っていたものの疲労と身体的なストレスに非常に高い値が出た。
脈診では肝の弱さ、腹部に冷えがあり、筋肉的な触診では首や肩の緊張に加え
腕全体やふくらはぎのむくみ、骨盤に若干の傾きがみられた。
1回目の施術
まずは仰向けでお腹を温め、手足に鍼とお灸をして全身をリラックスさせ回復力を高める施術を行う。
次にうつ伏せになってもらい首・肩こり、腕やふくらはぎへ鍼をして10分置鍼。
抜鍼後、骨盤の傾きを整える矯正を行う。
そして再度仰向けになってもらいうつ症状の治療の為に頭や顔へ鍼施術を行った。
一度目の施術は鍼灸が初めてということもあり、本人と相談をして軽めの刺激に留めた。
次回は5日後に再来院の予約を取り1回目の施術を終えた。
2回目
前回の後、3日間は比較的調子が良かったが4日目から徐々に体調が悪くなり始めた。
5日目の今日は頭痛は出ていないが、余り調子が良くない。
今回は前回よりも刺激を上げて施術を行った。鍼が響く感覚も受け入れられた。
刺激が強い分、今回は施術直後から身体の軽さを感じてもらえた。
次回は7日後の予約を取り施術を終えた。
3回目
翌日の朝、1時間ほどだるさが出たがその後は調子が良かった。
今回は7日間比較的元気に過ごせた。
疲れを感じるとうつ症状も感じる程度。
今回も前回と同様の刺激量にて施術を行った。
次回は10日後に予約を取り終了。
4回目
今回は翌朝もだるさが出ることは無かった。
夫の協力も得られるようになり、負荷が減ったこともありほとんどうつ症状は感じなくなった。
日々の疲れによる肩こりや疲労感の方が気になる。
肩こりや疲労に対する施術を行い施術終了。
次回は予防の為に3週間後の予約を取り終了。
5回目
うつ症状は出なくなり、元気に育児や家事に望めるようになった。
しかし疲労は溜まるのでそちらを定期的にメンテナンスしていきたいということで
現在では3週間~4週間に1度の施術を行っている。
症例報告まとめ
今回の患者様では理想的な治療経過を辿って回復に向かうことができたケースです。
中には回復にもう少し時間がかかることや、身体の原因だけではなく栄養の偏りによってうつ症状が出ている場合もあります。
そういった方々一人一人の原因を追求し、それに合わせた治療計画や方針を組み立て治療に望んでいます。
辛い産後うつでお悩みの方は是非当院へご相談ください。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 21:00 / 院長コラム