2025年5月2日
躁うつ病は、躁状態とうつ状態を繰り返す症状です。うつ病は、長い間うつ状態で悩まされますが、躁うつ病の場合は気持ちが高まり、仕事や家事などをいつもより軽快にこなせる時期があるためにうつ状態の時に単なる怠けと捉えがちとなってしまい、診断や発見の難しい病気の一つです。
しかし、躁うつ病は、うつ状態の時に自分を責めやすく、うつ病よりも自殺率の高いとても怖い病気です。どの年代でもかかってしまう可能性のある病気ですが特に20代女性の方の罹患率が高いです。
躁うつ病の場合、躁状態の時にしか病院を受診しないためにうつ病と診断されることも少なくありません。病院を受診していない時期の生活もちゃんと主治医に伝えることで始めて発覚することがあります。多くの方は、躁状態の時よりもうつ状態の期間が長く、それもうつ病と間違えてしまう可能性を高めます。
躁うつ病は今では双極性障害と言われ、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害に分けられています。
双極Ⅰ型障害は、躁状態とうつ状態がはっきりしており、以前より躁うつ病と診断されていたのはこの双極Ⅰ型障害に当てはまります。躁からうつへの転換期は、緩やかに起こり、躁状態でもうつ状態でもない時もあります。躁状態の時は、本人も元気で病気の自覚がないので軽視しがちですが、躁状態の時に他人に攻撃的となったり、仕事や家庭でのトラブルが起きやすいのは実はこの躁状態の時なのです。双極Ⅰ型障害は双極Ⅱ型障害よりも重症な場合が多く、深刻な事態を招きかねませんので注意が必要です。
双極Ⅱ型障害は、軽い躁状態とうつ状態を繰り返すタイプです。軽い躁状態なので診断が比較的難しいようです。双極Ⅰ型障害のような躁状態の時に他人とトラブルとなるケースは少なく周囲も気付きにくいです。
軽い躁状態とは、何となく気分が高揚して軽快に仕事や家事がこなせる状態が少なくとも4日以上続く状態です。その状態の後、躁状態でもうつ状態でもない時期を過ぎて、双極Ⅰ型障害より長いうつ状態が続きます。双極Ⅱ型障害の場合、長いうつ状態が続くためにうつ病と診断されたり、本人自身もうつ病と認識されている場合が多いです。
躁うつ病の原因
躁うつ病の原因ははっきりとわかっていません。それは、遺伝的要因や環境要因などが複雑に関わっていると考えられているためです。
遺伝的要因として、躁うつ病を発症する親族に同じ病気で悩んでいる方が多く、環境的要因としては育った環境で慢性的なストレスを受けてる場合に発症しやすいと言われています。
また、躁うつ病にかかりやすい性格にも特徴があり、発症前は社交的で周りにも気を遣えて周囲の人の評判がいいのが特徴です。周りから見ると仕事も家庭が順調だが、過労やストレスで発症することもあります。
うつ病と見分けるチェックポイント
躁うつ病とうつ病との大きな違いは、やはり躁状態があることです。多くの方は、うつ状態から始まり躁状態や軽躁状態に転換して以後それらの状態を繰り返します。うつ病と見分けるポイントとしてうつ状態となる前にあります。
うつ状態になる前に
☑これまでにないくらい仕事や勉強、家事などがはかどり、気分爽快の時があった
☑アイディアが次々と思い浮かび、自分はとても優れていると感じる
☑自身に満ち溢れて他人の意見を受け入れられず自分が絶対正しいと思う
☑睡眠時間が少なくても眠気を感じずに仕事などができる
☑他人がすることに理由もなく腹が立ち、いつもイライラしていた
☑お金の使い方が荒くなり、衝動買いをしてしまう
これらの状態があった場合、躁うつ病の疑いがあります。専門医の診断を受けることをお勧めします。
病院での治療
正しい治療を受けなかった場合に自殺率が非常に高いのが躁うつ病の一番怖いところです。病院では、主にその状態に応じた薬が処方されます。
大体は、気分安定薬や抗不安薬、抗うつ剤や眠れない場合の睡眠薬が処方されます。それと並行して認知行動療法や心理療法などのカウンセリングが行われる場合が多いです。
当院での治療
当院では自律神経測定器を用いて自律神経の状態を計測して治療します。躁うつ病の方の場合、自律神経の状態もその日によってかなり変化していきます。自律神経測定器でこまめに計測して現在の自律神経の状態を把握することは、躁うつ病治療の特に重要な部分だと考えています。
また、東洋医学で広く用いられている脈診や腹診を駆使して弱っている臓腑や逆に活動が強すぎる臓腑を見つけ出してそららのバランスを整える施術もしております。治療ペースの目安は最初の一か月間は治療間隔をつめて、週に2~3回ほどの治療間隔でその後徐々に治療間隔を延ばしていきます。
症例1
40代 男性
6年ほど前に職場環境や家庭でも子供が生まれて家庭環境も変化が激しかった。その時は特にストレスに感じず、残業で終電や徹夜、早く帰れた時も子供の世話や家事などをしてほとんど休める時がなかった。
ある時から突然寝つきが悪くなり、ほぼ寝ないで仕事に行く時もあり体に疲れが溜まっていった。仕事もやる気が出ずに集中力も低下してミスも多くなった。体の倦怠感もひどく、仕事も休みがちとなったので病院を受診したところうつ病と診断された。
一か月間の仕事を休み、治療に専念した。徐々に体が回復してある日突然体がスーッと楽なった感じがしてそれが3週間ほど続いた。職場に復帰してからも今まで以上に仕事がこなせるような気がして軽快に仕事をこなしていたが、少しするとまた気分の落ち込みややる気の低下が出た。前回よりも程度がひどく、朝布団から起きることができないほどとなってしまった。また、病院を受診したところ今度は双極性障害と診断された。
当院の治療
当院にご来院されたころ、一回目のうつ期よりも強いうつ気分に襲われて気持ちも相当落ちているように感じていました。
まずは自律神経の状態を計測してしっかりと時間をかけて問診した上で治療に入りました。 一回目の治療後、体が少し楽になったように感じてその日はいつもよりも睡眠時間が長くとれた。本人は早く薬を減らしたいとのことで病院を受診することを拒んだが、薬をやめたときにその反動が起こる可能性があると説明して病院と並行して当院にも通院していただきました。
10回目までの治療で少しずつ気分をコントロールできるようになってきたと感じ始める。そう状態の時でもなんとか自分でブレーキをかけられるようになってきた。
16回目の治療が終了してから少しずつ職場に復帰されるようになりました。双極性障害は、油断してまた不摂生な生活やストレスがかかるとまた状態が悪化する可能性があり、長期的な治療が必要ということを説明して、治療頻度を2週間に1回程度で現在も通院中です。
症例2
30代 女性
フリーランスで働く女性。数か月に一度、仕事への意欲が高まりすぎて無理をする期間と、その後の極端な落ち込みが交互に訪れる症状が10年以上続いていた。医師から双極性障害と診断され、安定剤を服用中だが、睡眠障害や疲労感が慢性化し、身体的なケアを求めて来院。
当院の治療
来院時はうつ期に入って2日目だった。自律神経測定器で現状を調べると、交感神経の働きが著しく低下していることが分かった。気分の落ち込みが著しく、食欲もわかないため食事はあまり摂っていないとの事。首や肩、背中の筋肉は極度の緊張状態にあったが、お腹や脚には無気力な様子がみられた。また、手足は冷えており血流が十分に巡っていない状態であった。
そのため始めに仰向けの治療で、自律神経の働きを促進させる目的で腕や脚、頭のツボに鍼を行った。また、手足の冷えにはお灸を行い血流の改善を図った。うつ伏せの治療では首、肩、背中の筋肉の硬さに鍼を行って緊張を緩和させ、自律神経の働きを整える目的で背部のツボにも鍼を行った。
治療経過
1回目
施術中に眠気がきて落ち着く感じがした。首肩の鍼は少しズーンと響く感じがした。
治療間隔は3~4日に1回を目安にした。
2~3回目
体調に大きな変化はないが、肩こりがやや改善。
4~7回目
夜の睡眠が深くなり、気分の落ち込みが和らいだ。
8~12回目
気分の波が穏やかになり、睡眠障害も改善傾向。治療間隔は1週間に1回に減らした。
13回目以降
躁状態の時も異常な気分の高ぶりはなく、普段よりは元気になる程度に落ち着いている。
治療を月1回に減らし、経過観察中。
症例3
30代 女性
都内で事務職としてフルタイム勤務。
1年ほど前に精神科で「双極性障害(II型)」と診断され、現在も通院しながらお薬を服用中。
普段は落ち込みやすく、特に仕事が忙しい時期や生理前後に気分が沈み、体も重だるくなる。最近では、朝起きるのがつらく、出社の準備にも時間がかかるようになった。また、便秘や胃の不快感もあり、肩や首まわりのこり、背中のだるさを強く感じるようになったとのこと。
「気分が落ちて仕事が手につかない日があり、このまま悪化したらどうしよう…」という不安から当院を訪れた。
当院での施術
初回の診察では、全体的に表情がやや沈みがちで、首・肩・背中の筋肉に強い張りやこりが見られた。特に肩甲骨の内側から首筋にかけての筋肉が固く、姿勢も前かがみ気味で浅い呼吸が目立った。
当院では、まず身体の緊張をゆるめ、リラックスできる状態をつくることを優先。自律神経のバランスを整え、気分の波が起こりにくい状態を目指して施術を開始した。
具体的には、頭と手足にあるツボを中心に使用し、神経の働きを落ち着ける「百会」や「内関」、気の巡りを整える「太衝」などを選んだ。うつの傾向が強い時期は、エネルギーが全体的に不足している印象があり、冷えや血の巡りの悪さにも配慮した。
施術は週2回のペースで行い、鍼に加えて、必要に応じてお灸や低周波による電気刺激も使った。毎回の状態を丁寧に確認しながら、その日の体調に合った刺激量やツボの位置を微調整している。
治療経過
1回目
全身が重く、特に首・肩・背中のこりが強い。気分も沈みがちで、睡眠の質が悪く、朝の起床がつらい状態。施術後、体が少し軽く感じられる。
3回目
肩こりがやや改善し、施術後は呼吸が深くなったような感覚がある。朝の準備がスムーズに進む日が出てきて、気分がやや前向きな日も。
5回目
肩・背中のこりは日常的に軽減し、胃の不快感が和らぐ。通勤時の体のだるさも少し改善。夜も眠りやすくなり、集中力が回復しつつある。
8回目
気分の落ち込みが短くなり、自分で気持ちを立て直せるように。表情に明るさが出て、姿勢も少し良くなる。軽いストレッチを習慣化。
12回目
気分と体調が安定し、生活全体に余裕が出てくる。朝の支度や仕事がスムーズにこなせるようになり、表情に自信と安心感が表れる。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 12:20 / 院長コラム