2016年5月30日
五十肩は、その名の通り50代に多く見られる症状ですが別に50代だけが罹る病気とも限りません。40代や60代の方でも五十肩の症状は起こりえるのです。
50代 男性
ある朝に髪の毛をセットしている時に右肩が痛いと実感。その夜の仕事帰りでジムでトレーニングをしていたらさらに痛みが出てきて、その日はトレーニングを中止して帰宅した。その夜から肩に強い痛みを感じるようになり、日常生活で肩を上げる動作をしようとすると痛みが出るようになった。ひどい時は、夜中も痛みを感じて痛みで起きてしまうこともあった。 その後、整形外科を受診したところいわゆる五十肩と診断されて湿布薬と痛み止めを処方されたがあまり効果が見られず、当院にご来院されました。
<当院の治療>
痛みを発症してまだ1週間程ということで、炎症がまだ引いていないので一度アイシングをしてから鎮痛・抗炎症目的で鍼灸施術を施しました。 自宅でも1日に1~2回は15分間のアイシングをしてもらうようにしました。
2回目の治療で治療効果や自宅でのアイシングの効果があったのか安静時痛や夜間痛は軽減してきた。5回目までの治療で肩を高くまで挙げなければ日常生活で痛みを感じなくなるまでになった。6回目以降、治療でも可動域を広げるストレッチと本人にも少しずつ動かすように自宅で体操をしてもらい可動域を拡げていきました。8回目の治療で痛みがほぼ消失したため治療を終了して引き続き、自宅などで可動域を拡げる体操を行うようにしてもらった。
五十肩は正確には肩関節周囲炎と言われます。40代後半から60代にかけてが一番発症するリスクが高くなります。 五十肩は、3つの病期に分けられます。
<急性期>
一番痛みが激しい時期です。安静にしていても痛みが出て夜間痛もあり、睡眠が妨げられる場合もあります。炎症の範囲が肩峰下や肩関節周囲の筋肉まで広がることもあり、アイシングをすることで痛みが軽減される場合があります。
<拘縮期>
次第に肩関節の拘縮が起きて、肩関節の可動域が制限されます。
<慢性期>
多くは半年ほど慢性期を経ます。徐々に痛みが軽減してきますが、動かすと痛みが出ると脳に記憶されているため可動域は痛みよりも遅く広がっていきます。
いわゆる五十肩といわれるものは、50代を中心として40代後半から60代前半にかけて発症する肩の痛みと運動制限を主とする疾患です。肩関節は人体の中で一番広い可動域を持つ関節の一つです。そのため、肩の痛みの原因となる疾患は多くあり、五十肩の他にも腱板損傷や頸椎疾患など様々などです。また内臓疾患の関連痛の可能性があるので痛みが出た場合は念のため一度病院で検査を受ける必要があります。 本来、両側に発症することは少なく片側の方に痛みが出ます。
・五十肩の症状 <疼痛> 疼痛は、最初肩関節付近の鈍い痛みの場合が多く、徐々に痛みが鋭くなってきて少し動かすだけでも激しい痛みが肩や上腕に走るようになります。痛みのため腕を上げる動作や腕を背中にもっていく動作などができなくなります。 疼痛がひどい場合は、安静にしていても痛くなったり、夜寝ている時にも痛みが出ます。しかし、肩の局所に熱感や赤みが出ることは少なく、あった場合は石灰沈着腱板炎が疑われます。
<可動域制限>
五十肩は肩関節の可動域制限がかかるのが特徴の一つです。特に腕を上げる動作や腕を背中の方に持っていく日常生活ではブラジャーのホックをつける動作や髪を結ぶ動作ができなくなります。 もし可動域制限が見られずに痛みだけがある場合は上腕二頭筋長頭腱などの症状が疑われます。
五十肩は肩関節周囲炎と言われ、腱板損傷や石灰性腱炎など炎症・損傷部位が明らかな場合は五十肩とは言われません。下記の条件の物を満たす五十肩と定義されています。
●肩に疼痛と運動制限がある
●年齢が40歳以降である
●明らかな原因が無い。
上述してあるような肩の疼痛や可動域制限に加えて年齢や誘発原因が五十肩を見分けるポイントとなります。
炎症や痛みが長期化することもあります。長期化した場合に筋収縮や関節の拘縮も長期化して回復するまでの期間も長期化してしまいます。痛みは交感神経の活動を高めやすく、筋肉内の血管も収縮して血流が悪くなり、筋肉は虚血状態となってしまいます。すると乳酸などの疲労物質・発痛物質なども筋肉内に残りやすく、さらに痛みが出る悪循環となってしまう可能性があるのです。よって痛みが出た時点で適切な処置を早急に行うことが重要となります。
東洋医学では五十肩は主に2つのパターンが原因として考えられています。 まず一つが、体外から『邪気』を受けてそれが肩の痛みに繋がるパターンです。体外からの邪気の種類は主に「風寒の邪気」と「湿邪」です。寒いところで風にあたった際や湿気の多い場所にいた時にそのような邪気を受けやすいと言われています。
また、邪気は気血を滞らせて痛みを発症させることもあり、それが肩部であった場合に五十肩の症状を発症させるのです。 もう一つのパターンが五臓六腑の体の外から邪気を受けるため「肝」と「腎」と「脾」が何らかの原因で損傷して働きが弱まって五十肩を発症すると考えられています。「肝」と「腎」と「脾」は特に気血の生成や流れに重要な部分です。それらが不調となると気血が滞りやすくなり、痛みや筋や関節の栄養不足に繋がるのです。
急性期は無理に肩を動かすことを避けて、なるべく安静にします。痛みが強い場合はアイシングをして炎症を抑えるよう促します。この際に非ステロイド性抗炎症薬の投与や副腎皮質ステロイド薬またはヒアルロン酸の関節内注射も行われる場合もあります。 慢性期には安静治療から可動域を広げるストレッチや体操など積極的治療に移行していきます。約6カ月ほどかけて治癒に向かっていくとされています。
急性期の場合、痛みの強い部位に鎮痛作用と炎症を抑える目的で鍼灸施術をして行きます。必要であればアイシング療法も並行して行っていきます。痛みがある程度引いたら肩関節周囲の筋肉の硬さを取るために手技療法(マッサージや整体)を行っていきます。
東洋医学では肩ばかりに目をやるのではなく身体全体を診て施術していきます。上述の通り特に「肝」と「腎」と「脾」の経穴を中心に全体を整えていきます。局所的に診ると溜まっている老廃物を取り除くことや筋肉や骨に栄養が行き渡るように促します。また肩周りに鍼やお灸を施すことにより筋肉の弛緩を促し、鍼の刺激により痛みを感じる閾値を上げて痛みを感じにくくする作用を促します。
また、慢性的な痛みは、交感神経過亢進状態を長期化させます。それが自律神経の乱れに繋がります。当院では、自律神経測定器を用いて自律神経の状態を把握して自律神経を整えることで他ではない治療効果を得られるのです。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 13:33 / 院長コラム