2017年1月31日
PMSでは身体的、精神的症状が多く現れます。
西洋医学ではまだ原因がはっきりとは明らかになっていませんがホルモンバランスや自律神経機能の失調が関与している事は確かです。
鍼灸治療では自律神経機能やホルモンバランスを整える作用があるため、PMSの症状が改善していきやすい治療法です。
しかし単にホルモンバランスや自律神経機能失調といっても、個人個人で現れる症状や身体の状態、これまでの生活や環境は異なります。
ですので鍼灸治療においても治療するツボは個人で異なってきます。
身体の状態を把握するための一つの視点として、東洋医学的な面でPMSを見ていきます。
東洋医学で考えると主に、「気血水」といったエネルギーや栄養の滞りや不足、「肝・腎・脾」といった臓器の不調などによりPMSの症状が現れてきます。
気や血が滞る事なく、関連する経絡を巡り子宮へスムーズに流れる事で、正常な月経が起こります。
しかし何らかの原因でこの気血がスムーズに巡らないと、特に下腹部が張ったような痛みや、チクチクあるいはズキズキとした鋭い痛みを生じます。
その他に月経が遅れ気味だったり、胸や脇が張ったり、月経時に血の塊が見られたりなどの症状が現れます。
原因としては、主に肝の機能低下によります。
このタイプでは、肝の機能を回復したり、気血をスムーズに流すための治療を行います。
気血がスムーズに流れる事で正常な月経が起こる事はお伝えした通りですが、その原因には肝の機能低下の他に、内湿(水の滞り)があります。
内湿とは主に脾の機能低下により、余分な水分が出来てしまい、それが経絡に詰まってしまっている状態です。
特に子宮に関連する経絡に詰まる事で、気血が滞り月経痛などの症状が起こります。
その他の症状として、おりものが多い、浮腫、お腹や脚の重だるさ、軟便なども現れます。
このタイプの場合、脾の機能回復や滞っている余分な水分を巡らせるような治療を行います。鍼よりもお灸が効果的な場合が多く見られます。
気血を滞らせる原因は実はもう一つあります。
それは冷えです。冷えがあると気血がスムーズに巡らないために、月経痛などの症状が現れます。
冷えの原因は、冷たいものや生ものを多く食べる、雨などで体を冷やす、身体の陽気(内臓や経絡を温めるエネルギー)が不足している事などが挙げられます。
冷たい物や生ものの過食は特に脾を冷やし、陽気の不足は腎の機能低下が根本にある場合があります。
このタイプの場合、下腹部の冷えと痛み、手足の冷え、下痢や便秘などの症状を伴う事が多く見られます。
その方の状態により、冷えを取ったり陽気を補う治療を行ったり、根本にある脾や腎の機能回復のための治療を行ったりします。
肝は気血をスムーズに巡らせる作用があります。この肝に不調があると、気血が滞り月経痛などの症状が現れます。
特に肝はストレスの影響をかなり受けます。強力で持続的にストレスを受けると、肝の機能低下が起こります。
この場合、下腹部の張った痛みなど「気血の滞り」の症状の他に、
肩や首のコリや張り、情緒不安定、怒りっぽい、イライラしやすい、ため息、ゲップ、お腹の膨満感、胸焼け、めまい、耳鳴り、頭痛、喉の異物感などの症状が現れる事があります。
この場合、気血を巡らせる治療と一緒に肝の機能回復のための治療が必要になります。
脾に不調があると、水分をうまく代謝する事が出来ず、余分な水分が溜まります。これが既にお話した「内湿」です。
また冷たい物や生ものを過食すると、冷えが生じて気血の巡りが悪くなるだけでなく、冷えにより脾を傷めてしまい脾の不調を招きます。
偏った食事や栄養不足も脾の機能低下を招きます。
脾の不調があるとPMSの症状の他に、浮腫、倦怠感、話すのが億劫、食欲不振、軟便、息切れなどの症状が出てきます。
この場合、脾の機能回復のための治療と共に、状態によって冷えを取る治療を行ったり、水分を巡らせる治療を行う必要があります。
栄養が偏っていたり、加齢、手術や服薬、炎症が起きていると腎のパワーは落ちていきます。
こういった原因により腎が弱ると、直接的に生殖器の問題が現れます。これは腎は生殖器の機能と密接に関係しているためです。
また腎の機能低下が起こると、体に冷えが出てきます。
そのため気血が滞ったり、ホルモンバランスや自律神経機能が崩れ、月経痛などのPMSの症状が現れます。
腎の不調があると
精力減退、耳鳴り、難聴、足腰の重だるさ、頻尿、免疫力低下、不眠、無気力などの症状を伴います。
PMSと言ってもこのように様々な原因があり、それぞれ現れる症状も治療法も異なります。
ですので、これまでの経緯やその方の環境、ライフスタイルなどを詳しく聞いた上で、各種検査を行い、お体の状態を把握します。
そして気血水の滞りを改善したり、脾肝腎の機能回復を行っていく事で、PMSの症状とその他に現れている症状が改善していきます。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 17:36 / 院長コラム