2017年2月27日
上肢(肩、上腕、前腕、手)の痺れや痛みが主な症状です。
これは上肢を支配する神経と動脈が首の前と胸の前辺りで締め付けられて発症します。原因となる筋肉は斜角筋と小胸筋で骨では鎖骨と肋骨が関係します。
胸郭は胸椎、肋骨、胸骨が構成し、筋肉によって動かされます。そのため筋肉の異常や姿勢などが大きく関係します。
筋肉が酷使して硬くなることや筋力低下で支えられないため胸郭出口が狭くなる事があります。姿勢では猫背など不良姿勢になると胸郭出口が狭くなり神経と動脈を圧迫します。
病院では基本的に保存療法と予防のため訓練が指導されることが多いです。
治療院でもよくみる疾患で、鍼灸治療でも改善させていくことは可能です。
鍼灸の効果で血流増加と筋緊張緩和がありますので、直接筋肉を刺激する事で柔軟性を取り戻せます。
胸郭出口症候群は、様々な原因により腕や手の痛み、痺れ、冷えやだるさなどの症状が出る疾患です。
東洋医学で診ていく場合、2つの側面から診ていく必要があります。
1つは痛みの出ている経絡、もう1つは症状の原因です。
腕や手には6つの経絡が通っています。経絡は気や血といったエネルギーや栄養がスムーズに流れる事で正常に機能します。
気血が何らかの原因で滞りを起こすと詰まってしまい痛みが生じます。
胸郭出口症候群では、後ほど説明するいくつかの原因により、頚部や肩甲骨周りの経絡が滞りを起こし腕や手に痛みが生じている状態です。
大まかな経絡の分布は、
胸から腕の前面、そして親指にかけては、肺経が通っています。
胸から腕の前面、そして中指にかけては、心包経が通っています。
胸から腕の内側、そして小指にかけては、心経が通っています。
首の前面から腕の外側、そして人差し指にかけては、大腸経が通っています。この経絡は肩甲骨へも巡っています。
首の後面から肩甲骨、そして腕の後面から小指にかけては、小腸経が通っています。
首の側面から腕の後面、そして薬指にかけては、三焦経が通っています。
まずはこの分布からどの経絡に異常があるかを判別します。
また胸郭出口症候群の場合、西洋医学では首周りに原因があるとされていますが、実際は背中や肩甲骨周り、前腕や手にも経絡の滞りが多く見られます。
さらには過去の怪我や痛みの影響が経絡を詰まらせる原因にもなります。
ですのでその辺りのツボをよく触診し、反応の出ている経絡を特定し治療(経絡を巡らせる)していきます。
この様に経絡の側面からは、痛みの出ている部位と周囲の反応の出ている経絡から異常経絡・ツボを見つけ、流れを回復する事で痛みを改善していきます。
以上のように、 胸郭出口症候群では、首や腕に分布する経絡が詰まる事で痛みが生じて来ますが、その詰まりが起こる原因は大きく4つあります。
①風寒の邪+痰湿(たんしつ)
胃腸の機能が落ちていると水分の代謝がうまく行われず、「痰湿」と呼ばれる病理物質(余分な水分が体内に長期間溜まっている状態)が蓄積してしまいます。
この状態の時に、自然界の異常気象によって生じた風邪と寒邪(風寒の邪)が体に入り込み、痰湿とくっついてしまう事で経絡を詰まらせてしまいます(風寒痰)。
発作性の引きつるような激しい痛み、顔面蒼白、冷やすと痛みが増し温めると軽減する、発熱や寒気を伴う事がある、と言った症状が特徴です。
②陽虚(ようきょ)による虚寒(きょかん)
体内には陽気という、主に臓器や筋肉など体を温め機能を活性化させるためのエネルギーが巡っています。
栄養不足や少食、消化器系の不調、長期の臥床、加齢などにより、気血が不足する事があります。
気が減ると陽気も不足するため、体を温めるエネルギーが不足し、冷えが生まれます。
このように現れる冷えを虚寒といいます。
冷えは経絡の流れを妨げ、気血を滞らせる特徴があります。
持続的な不快な痛み、手足や腹部などの冷え、温めると症状が軽減すると言った症状が特徴です。
③肝気鬱結(かんきうっけつ)
長期間ストレスを受けていると肝の機能障害が起こります。そうすると気血をスムーズに巡らせるという肝の機能が失調し、気血の滞りが起こります。
突っ張るような痛み、ストレスや情緒の変動で痛みが出現する、イライラしやすい、胸やお腹の張りなどの症状が特徴です。
肝気鬱結が慢性化すると気だけではなく血も滞り、血瘀(けつお)という状態になります。
この場合、刺すような鋭い痛み、ジンジンとした強い痺れ、夜間痛などが特徴的です。
④気虚血瘀(ききょけつお)
症状が慢性化したり、栄養不足や睡眠不足が重なると、気血を消耗し、血を巡らせるエネルギーが不足してしまいます。そして血が滞ること(血瘀)で経絡が詰まってしまいます。
慢性的な刺すような鋭い痛み、ジンジンとした痺れ、痛みが治まるまで時間がかかる、筋肉の痙攣、息切れ、顔色が黒っぽい、夜間の痛みなどの症状が特徴です。
以上のような体質がもともとある状態で、首や肩甲骨、腕を使い過ぎたりすると、胸郭出口症候群の症状が現れてきます。
これらの原因がいくつか重なっている事もよく見られます。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 21:24 / 院長コラム