2021年9月21日
精神疾患は最近増加傾向にあります。厚生労働省の発表では平成8年から平成23年にかけて200万人から300万人ほど増えました。この数字だけ見ると現代社会にとって精神にかかるストレスが増えているとも考えられます。
様々な症状に対して病名は付くものの根治する治療や確実に治る薬物も無い状態です。
東洋医学では昔から効果があったとされる治療法で作られているため身体全体から原因を突き止めて治療していきます。
長期的証拠が東洋医学の実用性を作ってきました。精神疾患においても東洋医学は効果を発揮します。東洋医学の五臓六腑に精神や情緒を主る役割があるからです。身体からでる反応を調べてバランスを整える治療法は現代に増えてきた精神疾患に効果的だと思っています。
不安神経症を東洋医学的に考えると、「肝」という臓器の状態がまず直接的に関与しています。
「肝」は肉体的、精神的ストレスがかかった時に最初に反応し、そのストレスに抵抗する作用があります。
通常であれば「肝」が正常に機能しストレスにも適切に対処できるため、何か症状として現れる事はありません。
「肝」は全身の「気」というエネルギーを巡らす作用がありますが、正常ならば「気」が滞ることなく、全身を巡ります。
しかし過剰なストレスが継続的にかかると「肝」の許容範囲を超え、体の異常な反応が出てきます。
こうなると自律神経が乱れ、またホルモンバランスも崩れてきます。
自律神経は交感神経系が強くなる傾向にあり、ホルモンではアドレナリンやノルアドレナリンと言った「カテコールアミン」が過剰に分泌されます。
そして自律神経が乱れカテコールアミンが過剰に分泌された状態が続くと、
血圧上昇、心拍数増加(頻脈や動悸)、不安感の増大、パニック障害、不眠症が起こってきます。
これが「肝」の機能低下により「気」の巡りが悪くなった状態です。
この時期に現れてくる症状は他に、
肩や首のコリや張り、情緒不安定、怒りっぽい、イライラしやすい、ため息、ゲップ、わきや胸の張り、お腹の張った痛みや膨満感、胸焼け、めまい、耳鳴り、頭痛、喉の異物感といったものがあります。
体の状態によって治療に用いるツボは異なってきますが、まずは「肝」の調整をし、「気」を巡らして全身の流れを改善するような治療を行なっていきます。
「肝」単独の機能低下であれば比較的回復しやすいです。
しかし「脾」や「腎」といった臓器の機能低下がベースにある場合は、回復に時間がかかります。
その場合は「脾」「腎」の調整も同時に行っていく必要があります。
「脾」は食べ物を消化して、「気」や「血」を作り出します。
栄養不足や栄養の偏り、お腹や足の冷え、胃腸の炎症があると「脾」が弱くなり、「気血」が不足します。
また強いストレスが継続的にかかり「肝」の機能低下が出てくると、自律神経が乱れ「脾」の機能が低下してきます。
上述した不安神経症の原因の一つとされる過剰なカテコールアミンですが、この作用を抑える「セロトニン」という物質も「脾」が弱ると産生が低下します(気血不足の状態)。
「脾」が弱ると、日中の眠気、集中力の低下、浮腫、倦怠感、話すのが億劫、食欲不振、軟便や下痢、息切れなどの症状が出てきます。
こうした事から「肝」の治療と同時に「脾」の治療や「気血」を補う養生法が必要になってきます。
「腎」は体の生命エネルギーを蓄えている臓器で、加齢や栄養の偏り、手術や服薬、炎症が起きていると「腎」のエネルギーは低下していきます。
(西洋医学的に言う「副腎疲労」という状態に近いと考えられます。また女性の場合は、更年期に見られるエストロゲンの低下なども含まれます。)
「腎」は「肝」と関わりが深く、「腎」が弱ると「肝」の機能を支えられずに、「肝」の暴走を止める事が出来ません。
なぜなら「肝」と「腎」は協調し合って、体内のホルモンバランスを調整しているからです。
ですのでどちらかの機能が低下すると、ホルモンバランスが崩れ、それが自律神経の失調を引き起こし、不安神経症の症状を引き起こします。
「腎」のエネルギーが落ちていると、不安神経症の症状に加え、精力減退、耳鳴り、難聴、足腰の重だるさ、頻尿、免疫力低下、不眠、無気力などの症状を伴う事があります。
こうした事から、「腎」の機能低下がある場合、「肝」と同時に「腎」の治療や養生法が必要になっていきます。
当院では自律神経測定器により自律神経のバランスを計測して治療に入ります。自律神経中枢は情緒に関係します。自律神経バランスを整える事で精神の安定も図れると考えています。
小一時間程の治療で痛くない鍼と心地よいお灸で終わる頃には効果を実感して頂けると思います。
不安神経症やパニック障害で悩まれている方は渋谷α鍼灸院へお越し下さい。
症例① 30代 女性
2年ほど前に満員電車に乗っていたところ急に激しい動悸と血の気が引くような感覚があり、途中下車をしてしまった。
それ以来、満員電車に乗ると動悸と冷や汗をかくようになってしまった。
病院でパニック障害と診断され薬を処方されたが完治にはいたらず当院へ来院された。
発症当時は仕事も忙しく。首の痛みや頭痛をごまかしながら仕事をしていた。
現在は仕事量を減らし、無理をしない様にしているが首や頭の痛みが時々起こる状態。
◇1回目◇
とにかく全身の緊張が強く、手足も冷たくなっている。
測定器の結果ではストレスと疲労度が振り切っており、これらの改善も必要。
特に首や背中、頭の緊張が強く姿勢も悪くなっていた。
鍼が初めてだったので低刺激で行い、リラックスできるように施術を行った。
術後はとてもリラックスできたと言っていただけた。
◇2回目◇
前回の翌日に軽い怠さが出たが、その後に身体が少し軽くなったように感じた。
鍼の刺激は問題なかったということで今回は首と背中のコリを響かせた。
肩甲骨の可動も悪くなっているのでそちらも調整した。
◇3回~5回目◇
全体的に身体が軽くなり、症状はゼロでは無いが日常生活がしやすくなった。
満員電車にも乗れるようになったが希に軽い動悸が起こる。
◇6回~8回目◇
動悸もほとんど感じなくなった。
今後は定期的にメンテナンスを行い、現状を維持していきたい。
Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 11:15 / 院長コラム