線維筋痛症の鍼灸治療

2017年2月7日

線維筋痛症

 

我が国では200万人ほど線維筋痛症にかかっている人がいると計算されています。

男女差では圧倒的に女性に多く、1対女5ぐらいとされています。特に女性の更年期や中高年期が最も多くみられます。

耳鳴り

日本ではまだ認知度が低いため、一般的には聞かれない病名です。アメリカリウマチ学会によって1990年に診断基準が作られました。そこから急速に認識が広まりましたが、未だ日本では病院に行ったが相手にしてくれない、精神障害の一種と片付けられたという声を聞きます。

症状は、全身の筋肉や関節、腱など広範囲にわたって慢性的な痛みを感じます。日によって痛む箇所が変わることや些細な刺激によって誘発されることもあるため日常生活や仕事に支障が出てきます。

発症して重症かすると死にたくなるような痛みと表現する人もいます。

 

症状

全身に及ぶ疼痛が主な症状ですが、多くの随伴症状がみられます。

精神状態

抑うつ不安障害などの精神疾患も頻発に合併します。

疲労感

疲労感や倦怠感を強く感じる場合には仕事、家事などができなくなるほどです。慢性疲労症候群を合併する事があります。

睡眠障害

同一姿勢で寝ることが難しいため中途覚醒してしまいます。

乾燥症状

口や目の渇き

消化器や排便、排尿の異常

胃酸の逆流、腹部膨満感、嘔吐があります。

過敏性腸症候群の様な症状で下痢、便秘があります。

手足の症状

手や足のむくみやレイノー現象がみられます。

 

 

原因

この疾患は原因不明で、病院でレントゲンやMRI、筋電図などで調べても異常を発見できません。一説では、中枢性疼痛で神経が過剰に興奮した状態や痛みを抑える下行疼痛抑制経路の機能不全と言われています。

痛みのコントロールが出来ない事が全身の強い痛みを引き起こしていると考えられています。

 

診断

診断の際に使うのがアメリカのリウマチ学会の分類基準で「広範囲の疼痛」と「全身の18箇所に4kgの強さで圧をかけて11カ所以上に疼痛」が認められた場合です。

全ての人に共通して効く治療は未だありません。

 

東洋医学からみた線維筋痛症

 

線維筋痛症は現代医学では、ストレスが誘因となっている事は分かっていても、原因は不明で治療困難な難病として分類されています。

しかし視点を変えて東洋医学で考えて行くと、体の状態や治療方法が見えてきます。

 

線維筋痛症では、全身の疼痛が主な症状で、精神症状や胃腸症状を伴います。

 

これらの症状の大きな原因は「」にあります。

 

全身の疼痛

」は全身に気血(エネルギーや栄養)を巡らせる作用があります。

肝はストレスに弱いため、持続的なストレスに晒されると機能障害を引き起こします。

すると気血がスムーズに流れず、経絡(特に筋肉に分布する経筋)に詰まりが起こります。

するとその詰まった経筋は硬くなり、そして痛みを発するようになります(現代のトリガーポイント)。

これが全身に広がると、全身のあらゆる部分に疼痛が起こります。

 

肝の機能障害による症状は筋肉(経筋)に現れやすいのです。

 

 

精神症状

気血のスムーズな巡りは脳(精神活動)にも必須です。

肝の機能障害が起こると気血は滞り、うつ症状、情緒不安定、ヒステリーなどの精神症状が現れてきます。

 

 

胃腸症状

吐き気、食欲不振、下痢などの胃腸症状は「」や「」の機能障害によって起こります。

そして肝の機能障害により気血が滞ると、まず影響を受けるのがこの脾胃です。

肝が脾胃の機能を弱めるために、線維筋痛症ではかなり多くの方に胃腸症状が現れます。

 

 

東洋医学としての治療方法

ここまで線維筋痛症の症状が現れるメカニズムをご紹介してきました。

現代医学では難病と言われるこの疾患でも、東洋医学で考えると治療方法があります。

 

どの症状にも共通している、根本的な原因は肝の機能障害です。

ですのでまずは肝を調整する治療を行います。

その上で疼痛に関連する部位(ツボ)を緩めて、気血の流れをスムーズにしていきます。詰まりやすい部分はあるものの、基本的にはよく反応の出ているツボを探して行く必要があります。

 

精神症状に関しては、肝の治療と精神を安定させるツボを組み合わせて行きます。

 

胃腸症状も同様に、肝の治療と脾胃の治療を合わせて行う必要があります。

 

このような治療方法が基本的な方法になります。

しかし状態によっては、気が不足していたり熱がこもっていたり、冷えが強かったりと様々な状態にあります。

 

 

鍼灸

鍼灸で使う経穴には交感神経に働きやすい場所と副交感神経も反応する場所があります。自律神経のバランスを診た上でどちらかに反応するよう施術をします。

お腹に温かいお灸を使うと副交感神経が上がりやすく、爪の横や手足にある経穴を刺激すると交感神経が上がりやすいです。

治療効果を確認しながら進めていくことで終わる頃には身体が温かくなった感じなど効果を実感して頂けると思います。

 

使用する鍼とお灸

当院で使う鍼は髪の毛より細くて痛みを最小で行えるものを使います。お灸も昔と違って火傷にならないよう心地良い刺激で行ないます。

これは痛みが強い事はストレスを感じて症状を悪化させないためです。

衛生面でも鍼は完全使い捨てを使用しますのでご安心して下さい。

完全使い捨ての鍼

 

効果的に温める温灸器

 

点で刺激を行なう灸

 お灸治療

輻射熱で行なう灸

 

 

自律神経

ストレスによって線維筋痛症の症状を引き起こしたり悪化したりします、。全身症状は自律神経失調症様症状なため自律神経を整える事が重要だと考えています。

鍼灸治療は自律神経を整えるのに優れた治療法です。

鍼とお灸を使って全身の経穴を作用させることで自律神経に刺激を与えてバランスを整えていきます。

交感神経と副交感神経のバランスを整えるため、当院では最初に自律神経測定器でバランスを調べてから治療を行ないます。

この機械では交感神経と副交感神経のバランスを調べられ、身体的ストレスや精神的ストレスもどれくらい溜まっているか客観的に見ることができます。

このデータを元に効果的なアプローチが出来る点と定期的に計測する事で客観的な体質変化が分かります。

交感神経優位や副交感神経優位の方は日々の生活習慣が原因になるため、体質改善には継続した治療が必要になります。ある日いきなり発症するわけではなく、徐々に蓄積したものがある日発症に変化するためです。

鍼灸治療の反応が良い方でも五回くらいを目安に1週間に一度の来院ペースをお勧めします。

 


Posted by 鍼 渋谷α鍼灸院 東京都 渋谷区 at 16:51 / 院長コラム

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